介護と仕事の両立を支える「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」とは

国(全国対応)の補助金

従業員が親などの介護に直面したとき、休業や働き方の調整をどう支えるか悩む事業主は多いはずです。

厚生労働省の「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」は、こうした介護と仕事の両立を後押しする中小企業事業主を支援する制度です。

介護休業の取得・復帰、短時間勤務などの制度利用、代替要員の確保、介護休暇の有給化と、複数の場面で活用できます。

全国どの都道府県の事業者でも申請でき、業種も問いません。

制度の目的と対象事業主

この助成金は、仕事と介護の両立に資する職場環境整備に取り組み、「仕事と介護の両立支援プラン」を作成したうえで、実際に介護休業の取得・復帰や両立支援制度の利用を進めた事業主を支援する仕組みです。

対象となるのは中小企業事業主に限られ、大企業は対象外です。

支給は事業所単位ではなく事業主単位で行われるため、複数の事業所を持つ会社でも法人全体で1つの事業主として扱われます。

支給を受けるには、介護休業や短時間勤務などの制度をあらかじめ就業規則や労働協約に定めておくことが前提になります。

単に「育児・介護休業法に準拠する」と書くだけでは制度を規定したことにならない点には注意が必要です。

また、介護休業の取得や職場復帰を支援する方針を、あらかじめ全労働者に周知していることも要件のひとつです。

ここでいう「対象家族」は、育児・介護休業法で定められた要介護状態にある配偶者や父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫などが範囲です。

対象労働者の要介護の事実を把握したら、まず上司や人事労務担当者との面談を行い、その内容を記録に残すところから手続きが始まります。

この面談記録が、後述する「仕事と介護の両立支援プラン」の土台になります。

支給の4区分と助成額の一覧

このコースは、大きく分けて4つの取り組みに対して助成金が支給されます。

それぞれ要件を満たせば重ねて申請することも可能で、有期雇用労働者への加算や環境整備加算も用意されています。

区分 基本額 拡大した場合の額
介護休業 40万円 60万円(連続15日以上の休業)
介護両立支援制度 20万円(制度1つ・利用20日以上) 30万〜40万円(利用60日以上、または制度2つ以上導入)
業務代替支援 3万〜20万円(新規雇用・手当支給等) 最大30万円(介護休業が連続15日以上の場合)
介護休暇制度有給化支援 30万円 50万円(10日以上の有給休暇を制度化)

支給人数の上限は、介護休業・介護両立支援制度・業務代替支援それぞれで1事業主あたり5人までです。

介護休暇制度有給化支援は、1事業主につき1回限りの支給となります。

介護と仕事を両立しながら働く従業員と、それを支える中小企業のオフィスの様子

介護休業への支給

介護休業の支給を受けるには、対象家族の要介護の事実を把握したあと、労働者と上司や人事担当者が面談し、その結果を記録した「仕事と介護の両立支援プラン」を作成することが必要です。

このプランには、業務の整理や引き継ぎに関する措置を盛り込んでおく必要があります。

そのうえで、同一の対象家族について連続5日以上の介護休業を取得させ、終了後は原則として原職等に復帰させ、復帰後3か月以上継続して雇用することが求められます。

支給額は40万円で、休業日数が連続15日以上になる場合は60万円に増額されます。

なお、復帰後3か月のうち、実際に働いた日数の割合が5割に満たない場合は支給対象外となるため注意してください。

介護両立支援制度の利用への支給

介護両立支援制度とは、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム、介護サービス費用補助といった、働きながら介護を続けやすくするための制度を指します。

これらのいずれかを労働者に合計20日間以上利用させると、20万円(複数制度を導入している場合は25万円)が支給されます。

利用日数が60日以上に達すると、それぞれ30万円・40万円に引き上げられます。

こちらもプラン策定面談の実施と記録、制度利用後1か月以上の継続雇用などが要件です。

どの制度をどれだけ利用させたかによって支給額が変わるため、対象労働者の利用実績を正確に記録しておくことが欠かせません。

たとえば短時間勤務制度なら、1日の所定労働時間を1時間以上短縮していることや、勤務時間短縮に伴って基本給等の水準が利用前より下回っていないことが確認されます。

在宅勤務やフレックスタイムを利用した場合も、業務日報などで勤務実態が確認できることが前提です。

制度ごとに細かな要件があるため、どの制度を使わせるかを決める段階から、記録の残し方まで意識しておくと申請がスムーズになります。

業務代替支援と介護休暇の有給化支援

介護休業や短時間勤務を取得した労働者の業務を、周囲の労働者や新たに雇い入れた人材が代替した場合には、業務代替支援として別途支給を受けられます。

新規雇用で代替要員を確保した場合は20万円(休業が連続15日以上なら30万円)、既存の従業員に手当を支給して業務を代替させた場合は、介護休業なら5万円(同10万円)、短時間勤務なら3万円です。

代替要員の所定労働時間が対象労働者の2分の1以上であることなど、細かな要件が定められています。

手当を支給する場合は、代替業務に対応した賃金制度を就業規則等に規定したうえで、代替する従業員の賃金を1日あたり数百円以上(区分により基準は異なります)増額していることも確認されます。

令和8年度からは、介護休暇制度有給化支援が独立した区分として新設されました。

有給かつ時間単位で取得できる介護休暇制度を、令和8年4月8日以降に新たに規定し、被保険者に合計10時間以上利用させると30万円、10日以上の有給休暇として制度化すれば50万円が支給されます。

ただし、令和7年度以前にすでに旧制度の介護休暇制度部分を受給している事業主は対象外です。

このほか、対象労働者が有期雇用労働者だった場合は10万円の加算が、介護休業等に関する研修や相談窓口の整備など環境整備の取り組みをすべて実施した場合は10万円の加算がそれぞれ用意されています。

申請の流れと必要書類

申請先は、人事労務管理を担う部署が属する事業所を管轄する都道府県労働局です。

申請期限は区分ごとに異なり、たとえば介護休業は休業終了日の翌日から3か月経過した日の翌日から2か月以内、介護休暇制度有給化支援は利用時間が10時間に達した日の翌日から2か月以内と定められています。

必要書類としては、就業規則や労使協定の写し、両立支援プランの記録、対象家族が要介護状態であることを確認できる書類(介護保険被保険者証など)、休業・制度利用の申出書、出勤簿や賃金台帳などが挙げられます。

郵送で提出する場合、消印の日付が期限内でも、労働局への到達が期限を過ぎていれば申請したことにならない点にも気をつけてください。

2023年6月からは電子申請にも対応しており、雇用関係助成金ポータルを通じて書類を提出することも可能です。

一度申請した実績のある事業主であれば、内容に変更がない書類については、確認書に記載することで提出を一部省略できる仕組みもあります。

ただし、これは電子申請ではなく書面申請の場合に限られるため、自社がどちらの方式で申請するかによって準備すべき書類が変わってくる点も押さえておきましょう。

こんな事業者に向いている制度です

このコースは、次のような中小企業事業主に向いています。

  • 従業員から親の介護について相談を受け、休業や働き方の調整を検討している事業者
  • 介護休業中の業務を誰が担うか決まっておらず、代替要員の確保に費用がかかっている事業者
  • 介護休暇を有給化し、従業員が休みやすい環境を整えたいと考えている事業者

一方で、支給申請日前1年以内に育児・介護休業法などの重大な違反があった場合や、法令違反について是正の指導を受けたまま是正していない場合は支給されません。

就業規則の整備状況や運用実態を、申請前に一度確認しておくと安心です。

また、「両立支援等助成金」には、このほかにも育児休業の取得・復帰を支援する「育児休業等支援コース」や、男性の育休取得を後押しする「出生時両立支援コース」など複数のコースがあります。

介護離職防止支援コースは、あくまで従業員の介護と仕事の両立に特化したコースである点が異なるため、自社が支援したい場面に合わせて選ぶことが大切です。

制度の内容や支給要件は年度ごとに見直されることがあるため、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。

両立支援等助成金のご案内|厚生労働省

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