テレワーク定着を後押しする国の助成金
人材確保等支援助成金には複数のコースがあります。
このうち「テレワークコース」は、テレワーク制度を新しく整備し、実際に運用する中小企業事業主を対象とした助成金です。
すでに紹介している「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」や「作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)」とは別のコースなので、混同しないよう注意してください。
対象は全国の中小企業で、地域は限定されていません。
テレワークの働き方を社内制度として根づかせたい事業者に関係する内容です。
対象になる事業主の条件
この助成金は、機器を買えば誰でも受け取れる制度ではありません。
雇用保険の適用事業所である中小企業事業主が対象です。
テレワークを新たに導入する事業主に加えて、すでに一部導入していて実施を拡大する事業主も対象に含まれます。
実施を拡大する場合は、テレワークの実施回数を評価前の期間と比べて一定割合以上増やすことなどが条件になります。
具体的な増加割合や算定方法は年度により調整されることがあるため、申請前に最新の支給要領で必ず確認してください。
自社が「新規導入」と「実施拡大」のどちらに該当するかによって、必要な準備や評価の基準が変わります。
「新規導入」と「実施拡大」の分かれ目
区分の判定は、評価期間の開始前3か月時点での就業規則等の整備状況で決まります。
テレワークの対象者や手続き、対象者に適用する労働時間・費用負担などの取扱いを、すでに1つでも規定していれば「実施拡大事業主」です。
いずれも規定していなければ「新規導入事業主」として扱われます。
新規導入事業主が就業規則等を整えた場合は、整備から3か月以内に評価期間を開始しないと、実施拡大事業主の扱いに切り替わる点に注意してください。
助成の対象になる取組の中身
注意したいのは、この助成金がテレワーク用のパソコンやルーターといった機器の購入費そのものを直接補助する仕組みではない点です。
対象になるのは、テレワークを制度として整え、実際に運用していくための取組です。
代表的なものとして、次のような内容が挙げられます。
- テレワークを行いやすい職場風土づくり
- 就業規則などの社内規程の整備
- 外部専門家によるコンサルティングの活用
- 労務管理担当者や労働者向けの研修
「機器を買った証拠」ではなく、「制度を整え、運用した実績」が評価の軸になっているとイメージすると分かりやすいでしょう。
なお就業規則等では、テレワークに必要な通信機器等の費用を会社と労働者のどちらが負担するかも明示する必要があります。
労働者に負担させる場合は、その具体的な内容まで明記することが求められます。

制度導入助成の要件を詳しく見る
制度導入助成の要件は、大きく分けて次の3点です。
- 就業規則等の整備(新規導入は評価期間開始前3か月以内、実施拡大は継続的に有効であること)
- 職場風土づくりの取組(必須)と、コンサルティングや研修などからの選択実施
- 評価期間3か月間におけるテレワーク実績
テレワーク実績の基準は、区分によって異なります。
新規導入事業主は「対象労働者全員が1回以上テレワークを実施」または「週間平均1回以上」のどちらかを満たせば足ります。
実施拡大事業主は、これに加えて延べ実施回数を評価期間前の3か月と比べて25%以上増やす必要があります。
支給額のしくみ(2段階方式)
支給額は「制度導入助成」と「目標達成助成」の2段階に分かれています。
それぞれの助成は定額で、両方を満たすと合計で最大35万円が支給される仕組みです。
| 助成の種類 | 支給の考え方 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 制度導入助成 | テレワーク制度を整備し、規程どおりに運用したことに対する助成 | 20万円 |
| 目標達成助成 | 制度導入後、一定期間の実施状況や賃金の状況に応じた助成 | 10万円(賃金が一定水準以上増えた場合は15万円) |
賃金の増加割合によって目標達成助成の金額に差が出る点は、実務上見落としやすいポイントです。
自社の賃金改定計画とあわせて確認しておくとよいでしょう。
目標達成助成の要件を詳しく見る
目標達成助成は、制度導入助成の受給が前提です。
目標達成助成だけを単独で受け取ることはできません。
主な要件は次のとおりです。
- 支給申請時点でも、テレワーク勤務に関する就業規則等が引き続き有効であること
- 制度導入後の離職率が、制度導入前の離職率以下であり、かつ30%以下であること
- 目標達成助成の評価期間における延べテレワーク実施回数が、労働者数の増減を踏まえても制度導入助成の評価期間の実績以上であること
離職率は、定年退職や重責解雇などを除いた計算式で算出します。
新規創業などで導入前の離職率が算出できない場合は、導入後の離職率が0%であることが条件になります。
申請の流れとスケジュールの考え方
申請期間は2026年4月1日から2027年3月31日までです。
ただし、この期間内であれば「いつでも自由なタイミングで」申請できるわけではありません。
就業規則の整備などから起算して3か月以内に評価期間(制度導入助成)を開始し、その3か月間の実績を評価したうえで、末日の翌日から2か月以内に支給申請を行う流れです。
制度導入助成の申請後は、評価期間(制度導入助成)の開始から12か月を経過した時点で評価期間(目標達成助成)が始まります。
ここでも同様に、3か月間の実績評価と、末日の翌日から2か月以内の申請が必要です。
評価期間の設定方法や申請書類の詳細は、制度導入のタイミングによって変わります。
着手前の段階で、公式の支給申請の手引きを確認しておくことをおすすめします。
申請に必要な主な書類
制度導入助成の申請では、主に以下の書類をそろえます。
- 支給申請書(様式第1号)
- テレワーク勤務に関する制度を規定した就業規則等の写し
- 職場風土づくりの取組を労働者へ周知した日付が分かる資料
- 研修やコンサルティングを実施した場合の実施報告書
- テレワークの実施状況一覧表(様式第2号)と、出勤簿などの勤務実績資料
- 支給要件確認申立書(電子申請の場合は不要)
目標達成助成の申請では、支給申請書(様式第3号)や実施状況資料に加えて、離職者がいる場合は離職状況が分かる書類、賃金要件の加算を受ける場合は増額改定前後の賃金台帳等が必要になります。
申請時に注意したいポイント
申請は、評価期間末日の翌日から起算した申請期間内に、労働局へ到達している必要があります。
郵送の場合は消印日ではなく到達日で判断される「期限内必着」のルールなので、余裕をもって提出してください。
支給対象となる取組について、他の助成金と重複して受給することは原則できません。
他の助成金をすでに申請している場合は、どちらか一方を選ぶ必要があります。
書類の不備や内容に疑義がある場合、労働局から追加書類の提出を求められることがあります。
偽りその他の不正行為による受給は不正受給として扱われ、助成金の返還に加えて違約金が課されるため、記録の管理には十分注意しましょう。
どのような事業者に向いているか
在宅勤務やサテライトオフィス勤務などの導入を検討している中小企業にとって、規程整備や研修にかかる負担を後押しする制度といえます。
一方で、機器購入費を直接補填してほしいという事業者には、想定と異なる可能性があります。
制度の仕組みを正しく理解したうえで、活用を検討してください。
申請にあたっては、支給要領や申請の手引きが年度ごとに改定されることがあります。
必ず最新の公式情報を確認したうえで、社会保険労務士など専門家への相談もあわせて検討するとよいでしょう。
最新の制度概要や申請様式は、厚生労働省の公式ページで確認できます。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)申請の手引き|厚生労働省公式ページ
申請を検討する際は、公式の手引きに記載された最新の要件・支給額・申請期限を必ずご自身で確認してください。


