事業拡大のために新しい人材を採用したい。
そう考える事業主に関係するのが「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)」です。
厚生労働省が実施する制度で、ものづくり補助金の交付決定を受けていることが前提条件になります。
生産性向上に取り組む中で新たな人材を雇い入れる場合、その賃金の一部が助成される仕組みです。
以下で対象者や金額、申請の流れを整理します。
どのような制度か
この助成金は、事業活動の一時的な縮小を経験した事業主が、生産性向上の取り組みとあわせて人材を確保する場合に活用できます。
前提となるのは、ものづくり補助金事務局が実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の第17次以降「製品・サービス高付加価値化枠」で交付決定を受けていることです。
事業再構築補助金の一部類型でも対象になりますが、本記事ではものづくり補助金のケースを中心に説明します。
交付決定を受けた事業計画の「実施体制」に、人材確保に関する事項を記載していることも欠かせません。
計画変更で記載を追加した場合は、その承認日の翌日以降の雇入れが対象になります。
ものづくり補助金〈製品・サービス高付加価値化枠〉との関係
産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)は、単独で申請できる制度ではありません。
前提となる「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」への申請段階から、意識しておく必要があります。
事業計画書を作成する時点で、実施体制の欄に人材確保に関する記載を盛り込んでおくことが出発点です。
記載を忘れたまま交付決定を受けると、あとから計画変更の手続きが必要になります。
対象になるのは、ものづくり補助金事務局が実施する第17次以降の「製品・サービス高付加価値化枠」で採択された事業に限られます。
それ以前の回次や、対象外の申請枠で採択された場合は、産業雇用安定助成金の対象になりません。
対象労働者はどのような人材か
条件を満たす労働者像を、具体的にイメージしてみましょう。
業務内容の面では、新しい事業計画の企画・立案を任せられる人材や、社内の教育訓練を担える人材が該当します。
現場を指揮・監督する係長相当職以上のポジションで迎え入れる人材も対象です。
単純作業を主な業務とする一般職や、パートタイムでの採用は対象になりません。
賃金面では、年間350万円以上という水準を満たせるかどうかが、採用条件を決める段階での判断材料になります。
基本給・諸手当のみで判断される点も、あわせて確認しておくとよいでしょう。
対象となる事業主と労働者の要件
助成を受けるには、事業主側にいくつかの要件があります。
下記4点はいずれも必須で、どれか一つでも欠けると対象になりません。
- 交付決定を受けた事業計画書の「実施体制」に、人材確保に関する事項を記載していること
- 生産量・販売量・売上高等の指標が、事業計画書申請月の前々々月から前月までの3か月平均で、前年同期に比べ10%以上減少していること
- 対象労働者の雇入れ日の前6か月から助成金の支給申請までの間に、雇用する労働者を解雇等していないこと
- 雇入れに係る事業所で受け入れている派遣労働者数が、前年同期比で一定以上減少していないこと(中小企業は10%超かつ4名以上、それ以外は5%超かつ6名以上の減少がないこと)
このうち3か月平均で前年同期比10%以上減少という条件は、直近の事業活動の落ち込みを客観的な指標で示す必要がある、という点がポイントです。
雇用保険適用事業所を設置し、労働者を雇用している場合に限られます。
対象労働者の雇入れそのものにも条件があります。
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、期間の定めのない労働契約で雇い入れる必要があります。
パートタイム労働者は対象外です。
雇入れの時期も、交付決定を受けた補助事業の実施期間内に限られます。
続いて、雇い入れる労働者側の条件です。
助成対象になる労働者にも、業務内容と賃金の両面で条件があります。
まず業務内容です。
専門的な知識・技術が必要な企画・立案や指導(教育訓練等)の業務に従事するか、部下を指揮・監督する係長相当職以上の業務に従事する、いずれかに該当する必要があります。
賃金についても基準があります。
年間で350万円以上の賃金が支払われる者が対象です。
この金額は、時間外手当や休日手当を除いた、毎月決まって支払われる基本給・諸手当に限られます。
支給対象期ごとに175万円以上支払われていることも条件になるため、雇用契約を結ぶ段階で賃金水準を確認しておくとよいでしょう。
支給額と支給人数
支給額は、企業規模によって異なります。
下表で整理します。
| 区分 | 支給額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 250万円 | 125万円×2期 |
| 中小企業以外 | 180万円 | 90万円×2期 |
雇入れから6か月間を「第1期」、その後の6か月間を「第2期」として、6か月ごとに2回に分けて支給される仕組みです。
支給人数の上限は、一事業主あたり5人分と定められています。
第1期の支給決定は、助成対象期間全体を通じて要件を満たすことを前提にしています。
もし後になって年間賃金が350万円に届かなかった場合など、要件を満たさないことが判明すると、すでに支給された助成金の返還が必要になる点には注意が必要です。
対象労働者が支給決定前に離職した場合は、原則として不支給になります。
申請までの流れ
支給申請にたどり着くまでの流れは、次のとおりです。
- ものづくり補助金の事業計画書を申請する(実施体制に人材確保の記載を含める)
- 事務局・審査委員会の審査を経て採択される
- ものづくり補助金の交付申請を行い、交付決定を受ける
- 補助事業実施期間内に対象労働者を雇い入れる
- 第1期・第2期それぞれの支給対象期が終わるごとに、産業雇用安定助成金の支給申請を行う
支給申請は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内に、都道府県労働局またはハローワークへ提出する必要があります。
第1期分と第2期分で、申請のタイミングがそれぞれ発生する点を覚えておきましょう。

申請期間と募集状況
このリーフレットは2025年(令和7年)4月1日改正版として、厚生労働省が公開しているものです。
改正後の内容として、本記事作成時点(2026年9月25日)で公式ページの記載と一致することを確認しました。
募集期間を区切った公募形式ではなく、ものづくり補助金の交付決定を受けた事業主が、随時、支給申請の手続きに進む形の制度です。
ただし、要件やリーフレットの内容は改正される可能性があるため、申請を検討する段階で改めて最新情報を確認してください。
どのような事業者に向いているか
この助成金は、次のような事業者にとって検討の価値があります。
- ものづくり補助金の交付決定を受け、これから人材を採用する予定がある事業者
- 直近の売上や生産量が一時的に落ち込んでいる事業者
- 企画・立案や現場の指揮監督を担える人材を、相応の待遇で採用したい事業者
一方で、ものづくり補助金の交付決定を受けていない事業主は、そもそも対象になりません。
まずはものづくり補助金の申請段階で、事業計画の実施体制に人材確保の記載を盛り込めるかどうかを検討するところから始める必要があります。
売上減少要件や解雇要件など、事業主側の条件は複数にわたります。
自社が該当するかどうかを一つずつ照らし合わせ、不明な点は早めに都道府県労働局やハローワークへ相談しておくと安心です。
最新の支給要件、申請様式、問い合わせ先などの詳細は、厚生労働省公式ページで必ず確認してください。
申請前には、最新の公式情報を確認したうえで手続きを進めることが大切です。


