「子どもが3歳になったら、時短勤務が終わってしまう」。
そんな従業員の悩みに応えたい事業主向けの助成金です。
厚生労働省の「両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)」は、3歳から小学校就学前までの子を育てる労働者向けに、テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方の制度を整えた中小企業事業主に対して支給されます。
全国どの都道府県の事業者でも申請でき、業種も問いません。
制度を複数導入し、対象の労働者に実際に利用してもらうことで、1人あたり最大25万円が支給されます。
3歳の壁と呼ばれる課題への対応
育児・介護休業法では、子が3歳になるまでは時短勤務などの措置が原則義務づけられています。
一方、3歳以降小学校就学前までの期間は、事業主が努力義務として柔軟な働き方の制度を用意する形に切り替わります。
このタイミングでフルタイム勤務に戻さざるを得ず、離職を選ぶ従業員が出てくることがあり、「3歳の壁」と呼ばれています。
この助成金は、3歳の壁を越えて働き続けられる環境を整えた事業主を後押しする位置づけです。
すでに公開している「育児休業等支援コース」や「出生時両立支援コース」とは対象となる制度も支給の仕組みも異なるため、混同しないよう注意してください。
対象となる柔軟な働き方の制度
助成金の対象になるのは、次の5種類の制度です。
- 始業時刻等の変更:フレックスタイム制、または始業・終業時刻を1時間以上繰り上げ・繰り下げる時差出勤制度
- 育児のためのテレワーク等:週または月の勤務日の半数以上を、1日の所定労働時間を変えずに利用できる制度
- 柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度:1日の所定労働時間を平均1時間以上短縮する制度
- 保育サービスの手配及び費用補助:ベビーシッターなどの手配や利用費用の補助
- 養育両立支援休暇制度:年10労働日以上の有給休暇を、時間単位でも取得できる制度
このうち3つ以上を労働協約や就業規則に規定することが、支給の前提条件です。
「柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度」だけは、3歳未満の子を養育する労働者が利用しても助成金の対象になりません。
制度を整えるだけでなく、面談を実施したうえで対象労働者ごとの「プラン」を作成し、キャリア形成への配慮も示す必要があります。

支給額の仕組みと上限
柔軟な働き方選択制度に関する基本の支給額は、次のとおりです。
| 導入した制度の数 | 制度利用者1人あたりの支給額 |
|---|---|
| 3つ | 20万円 |
| 4つ以上 | 25万円 |
対象人数は1中小企業事業主あたり5人までのため、基本部分の上限は125万円です。
この5人という枠には、後述する加算も含まれます。
支給を受けるには、対象の労働者が実際に制度を利用し、その実績が制度ごとに定める日数や時間の基準を満たしている必要があります。
たとえばフレックスタイム制や時差出勤制度、テレワーク等、短時間勤務制度は「所定労働日を前提として合計20日間以上の利用」、養育両立支援休暇制度は「利用開始から6か月の間に20時間以上の取得」が目安です。
単に制度を整えただけでは支給対象にならない点に注意してください。
加算で上乗せされる支援内容
基本の支給額に加えて、次の加算が用意されています。
- 子の看護等休暇制度有給化支援:法定を上回る内容で有給の看護等休暇を新たに整備した場合に、1事業主あたり30万円(1回限り)
- 制度利用期間延長加算:柔軟な働き方選択制度を3歳以上中学校修了前の子まで、または有給の看護等休暇を中学校修了前の子まで利用できるようにした場合に、1事業主あたり20万円(1回限り)
- 障害児等要配慮支援加算:障害のある子や医療的ケアを必要とする子を養育する労働者について、18歳になる年度末までの間、制度や休暇を利用できる措置とした場合に、1事業主あたり20万円(1回限り)
- 育児休業等に関する情報公表加算:自社の育休取得状況などを「両立支援のひろば」で公表した場合に、1事業主あたり2万円(1回限り)
障害児等要配慮支援加算は、令和8年4月8日の支給要領改正で新設された加算であることを、厚生労働省の公式資料で確認できました。
すべての加算を満たすと、基本額の125万円に72万円が上乗せされ、合計197万円まで受給できる計算になります。
ただし加算にはそれぞれ細かい要件があるため、どの加算を狙えるかは事前に一つずつ確認しておく必要があります。
申請の流れと必要書類
柔軟な働き方選択制度の支給申請は、対象労働者の制度利用開始日から6か月を経過した日の翌日から2か月以内に行います。
子の看護等休暇の有給化支援は、制度を利用した被保険者の利用時間数が10時間に達した日の翌日から2か月以内が期限です。
延長加算や障害児等要配慮支援加算は、これらの申請と同時に行う仕組みになっています。
主な添付書類は次のとおりです。
- 対象労働者との面談シートと、キャリア形成への配慮を含むプラン
- 制度を規定した労働協約または就業規則、関連する労使協定の写し
- 制度利用の申出書、出勤簿やタイムカード、賃金台帳など利用実績を確認できる書類
- 対象の子がいることを確認できる書類(母子健康手帳や住民票など)
申請先は、人事労務管理を担う部署がある事業所を管轄する労働局です。
電子申請にも対応しているため、雇用関係助成金ポータルを利用して書類を提出することもできます。
申請前に確認しておきたい注意点
準備の順番を誤ると、支給要件を満たせなくなることがあります。
- 制度を利用させる前に、労働協約や就業規則への規定が間に合っていない
- 対象労働者との面談やプラン作成を、制度利用開始後に行ってしまう
- 短時間勤務制度を利用しても、週や月の所定労働時間が実際には短縮されていない
- 直近1年以内に育児・介護休業法などの重大な違反があり、支給対象から外れてしまう
とくにプランの作成と面談は、対象労働者の制度利用開始日の前日までに済ませておく必要があります。
後追いでの整備は認められないため、制度を利用させる前の準備段階が重要になります。
どのような事業者に向いているか
このコースは、次のような事業者に向いています。
- 3歳以降の子を育てる従業員から「働き方を柔軟にしてほしい」と相談を受けている事業者
- 時短勤務終了後の離職を防ぎ、人材の定着につなげたい事業者
- テレワークやフレックスタイム制の導入をこれから検討している事業者
一方で、3歳未満の子を対象とした育休や時短勤務そのものを支援する制度ではありません。
その段階の支援については、育児休業給付金など別の制度を確認する必要があります。
制度の内容や支給要件は改正されることがあるため、申請前には必ず最新の公募要領を確認してください。
とくに支給額や対象となる制度の要件は見直されることがあるため、事前調査時点の情報をそのまま使わず、実際に申請する時点の公式情報で確認する姿勢が欠かせません。
制度の詳細・最新の支給要件は、必ず公式情報でご確認ください。


