契約社員やパートとして働く50代の社員を、正社員などの無期雇用に切り替えたい。
そう考える事業者に関係するのが「65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)」です。
有期契約で働く50歳以上の人材を無期雇用に転換した場合、事業主に助成金が支給される仕組みです。
対象になるのは、就業規則の整備や転換計画の実施にかかる負担です。
同じ65歳超雇用推進助成金には「65歳超継続雇用促進コース」や「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」もありますが、この記事で扱うのはそれらとは別の「高年齢者無期雇用転換コース」です。
混同しないよう、この記事内では名称を省略せずに使います。
制度の概要と実施主体
この助成金は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施しています。
JEEDは、高齢者や障害者の雇用を支援する国の機関です。
65歳超雇用推進助成金は、高齢者が働き続けられる職場づくりを後押しするための助成金です。
その中の1コースとして、有期雇用から無期雇用への転換を支援するのが高年齢者無期雇用転換コースです。
有期契約で働く50代の社員は、契約更新のたびに雇用継続への不安を抱えがちです。
無期雇用への転換は、そうした不安を減らし、事業者側にとっても人材の定着につながる取り組みといえます。
国はこの取り組みを金銭面から後押ししています。
高齢化が進む中、経験豊富な人材を有期契約のまま抱え続けることに悩む事業者は少なくありません。
契約更新のたびに事務手続きが発生し、本人のモチベーション維持にも気を配る必要があります。
無期雇用への転換は、こうした負担を軽減する選択肢のひとつです。
助成金という名称ですが、性質としては「奨励金」に近く、一定の要件を満たせば支給されます。
補助金のように事業計画の優劣を比較して採否を決めるものではなく、要件を満たしているかどうかが主な判断基準になります。
ただし、予算の状況によって取り扱いが変わる可能性はあるため、この点も申請前に確認しておきたいところです。
対象となる事業主と労働者の条件
対象になるのは、次の要件を満たす有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主です。
- 転換の対象者が50歳以上、定年年齢未満であること
- 対象者の有期契約期間が通算5年以内であること
- 事業主が無期雇用転換計画を作成し、機構の認定を受けていること
- 計画に基づいて実際に無期雇用への転換を実施したこと
つまり、単に契約形態を変えるだけでは助成の対象になりません。
あらかじめ計画を立て、認定を受けたうえで転換を実行するという手順が必須です。
この点は見落としやすいので、検討段階で早めに確認しておく必要があります。
対象地域は全国です。
業種による制限は、公式情報では確認できません。
申請先は、主たる事務所または事業所が所在する都道府県の支部になります。
本社と支店が別の都道府県にある事業者は、どちらの支部が窓口になるか、事前に確認しておくと手続きがスムーズです。
なお「50歳以上、定年年齢未満」という年齢要件をどの時点の年齢で判断するかについては、公式情報では明記されていません。
対象者の年齢が境界線に近い場合は、申請前に機構へ直接確認することをおすすめします。
助成額と支給人数の上限
助成額は、事業主の規模によって異なります。
中小企業とそれ以外の事業主で、1人あたりの金額に差があります。
| 区分 | 対象労働者1人あたりの助成額 |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 40万円 |
| 中小企業事業主以外 | 30万円 |
支給人数には上限があります。
1支給申請年度・1事業所あたり10人までです。
複数の社員を同時期に転換する場合でも、年度をまたいで計画すれば、翌年度分として別枠で申請できる可能性があります。
ただし詳細な取り扱いは、申請前に機構へ確認することをおすすめします。
助成額は定額であり、実際にかかった費用に応じて変動する仕組みではありません。
就業規則の改定や制度整備にかかる実費を、そのまま補填するものではない点は理解しておきましょう。

申請の流れと計画届の提出時期
この助成金の特徴は、転換を実施する前に「無期雇用転換計画」を提出し、認定を受けておく必要がある点です。
手続きの流れは、おおまかに次のとおりです。
- 無期雇用転換計画を作成する
- 計画の開始日の6か月前から3か月前までの間に、計画届を機構に提出する
- 機構による計画の認定を受ける
- 計画に沿って就業規則の整備などを行い、無期雇用への転換を実施する
- 転換の実施後、支給申請を行う
計画届の提出時期は「開始日の6か月前の日から3か月前の日まで」と定められています。
この期間を過ぎてから提出しても受け付けてもらえないため、転換を検討し始めた時点で、早めにスケジュールを組むことが欠かせません。
郵送で提出する場合は、必着の期日にも注意が必要です。
受付は通年で行われており、特定の募集期間だけに限定される制度ではありません。
ただし、年度ごとの予算状況によって取り扱いが変わる可能性はあるため、申請前の最新確認が欠かせません。
計画届の提出から転換の実施までは、最短でも3か月以上の期間が必要になります。
「今すぐ転換したいので今すぐ助成金を申請したい」という使い方はできません。
社内で無期雇用転換を検討し始めた段階で、この助成金の活用もあわせて視野に入れておくと、スケジュールに無理が生じにくくなります。
申請にあたって準備するもの
計画届や支給申請の際には、就業規則や労働条件通知書など、雇用形態の変更を裏づける書類の提出が求められます。
具体的にどのような様式・添付書類が必要かは、年度によって支給申請の手引きが更新されるため、申請時点の最新版を確認してください。
準備の段階で意識しておきたいポイントは次のとおりです。
- 就業規則に無期雇用転換に関する規定を整備しておくこと
- 対象者の契約期間や年齢要件を、契約書等で確認できるようにしておくこと
- 計画届の提出から転換実施までのスケジュールを逆算しておくこと
特に就業規則の整備は、認定審査に関わる重要な部分です。
社会保険労務士など専門家に相談しながら進める事業者も少なくありません。
また、雇用保険の適用事業所であることが前提条件になっている場合が一般的です。
すでに労働・社会保険関係の手続きを適正に行っている事業者であれば、大きな障壁にはなりにくいものの、未加入の項目がないか、この機会に確認しておくとよいでしょう。
書類の不備は審査の遅れにつながるため、提出前のダブルチェックも欠かせません。
活用が向いている事業者
この助成金は、次のような事業者にとって活用の検討価値があります。
- 契約社員やパート社員として長く働いている50代の人材がいる事業者
- 有期契約の更新のたびに人材の離職リスクを感じている事業者
- 高齢人材の定着を図り、採用コストを抑えたいと考えている事業者
- 就業規則の見直しを機に、雇用形態の整理を進めたい事業者
一方で、計画届の提出から転換実施までに一定の準備期間が必要なため、急な人員体制の変更を予定している場合には、スケジュール面での調整が求められます。
申請前に確認したいこと
この記事で紹介した内容は、記事作成時点での公式情報に基づいています。
助成額や対象要件、支給人数の上限などは、年度によって見直される可能性があります。
申請を検討する際は、必ず最新の支給申請の手引きや案内を確認してください。
詳細は高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の公式ページで確認できます。
不明な点がある場合は、都道府県支部の高齢・障害者業務課などへ事前に相談することもおすすめします。
計画届の提出期限は厳格に運用されているため、検討を始めたら早めに準備を進めましょう。


