人手不足の解消に役立つ機械やロボットを、審査に通れば安く導入できる制度があります。
それが「中小企業省力化投資補助金〈カタログ注文型〉」です。
あらかじめ用意されたカタログから製品を選ぶだけで申請できるのが特徴です。
人手不足に悩む中小企業・小規模事業者であれば、業種を問わず対象になり得ます。
制度の概要
この補助金は、中小企業庁が制度を設け、中小企業基盤整備機構が事務局を担っています。
名称は「中小企業省力化投資補助金」ですが、実は中身が2種類に分かれています。
ひとつは既定の製品カタログから選ぶ「カタログ注文型」、もうひとつは設備を個別に設計する「一般型」です。
本記事で扱うのは、手続きが比較的シンプルなカタログ注文型のほうです。
背景にあるのは、多くの中小企業が直面している深刻な人手不足です。
求人を出しても応募が集まらない、採用してもすぐに離職してしまう。
こうした状況の中で、機械やシステムに任せられる作業を任せ、限られた人員でも事業を続けられるようにする狙いがあります。
カタログ注文型は、いわば「省力化の入門編」として位置づけられている枠組みです。
対象になる事業者と対象経費
対象者は、人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者です。
業種の縛りは設けられておらず、飲食業や製造業、サービス業など幅広い事業者が申請できます。
対象になる経費は、事務局が公開しているカタログに登録された製品の導入費用です。
具体的には、次のような製品カテゴリーがカタログに登録されています。
- 飲食店向けの配膳ロボット・調理補助機器
- 清掃業務を自動化する清掃ロボット
- 在庫管理や検品を効率化するIoTセンサー・自動計測機器
- 受発注や勤怠管理を自動化するシステム機器
オーダーメイドの設備投資とは異なり、カタログに載っていない製品は対象にならない点に注意してください。
カタログの内容は随時更新されており、掲載製品の数や種類は今後も増えていく見込みです。
自社の業種に合う製品があるかどうかは、事務局が公開している製品カタログのページで検索できます。
補助上限額と補助率
補助上限額は、従業員規模によって段階的に設定されています。
2026年3月19日の見直し以降、公式サイトでは次の基準が示されています。
| 従業員規模 | 補助上限額(通常) | 賃上げ達成時の上限額 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 200万円 | 300万円 |
| 6〜20人 | 500万円 | 750万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
補助率はいずれの区分も1/2以下です。
賃上げ要件を満たすと上限額が引き上げられますが、要件の詳細は必ず公募要領で確認してください。
補助上限額は制度の見直しによって変わることがあるため、申請時点の最新情報を確認することが欠かせません。

一般型との違い
同じ省力化投資補助金でも、カタログ注文型と一般型では性格が異なります。
| 項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 対象製品 | カタログ掲載の汎用製品 | 個別設計の設備・システム |
| 補助上限額 | 最大1,500万円 | 最大1億円 |
| 手続きの特徴 | 製品を選ぶだけで比較的簡易 | 事業計画書の作成が必要 |
自社の業務にぴったり合う既製品がカタログにあるなら、注文型のほうが手続きの負担は軽くなります。
一方、独自の設備やシステムを構築したい場合は、一般型の検討が必要です。
申請スケジュールと流れ
カタログ注文型は、回ごとに申請期間が区切られる公募制です。
2026年9月時点では第8回の公募が実施されており、受付期間は2026年9月18日から10月16日17時までとなっています。
次回以降の公募時期は、公式サイトで随時案内される予定です。
申請のおおまかな流れは、次のとおりです。
- カタログから導入したい製品を選ぶ
- GビズIDアカウントを取得する
- 電子申請システムから申請する
- 採択後、製品を導入し実績報告を行う
申請にはGビズIDの取得が必要で、発行までに日数がかかる場合があります。
申請を検討し始めた段階で、早めにアカウントを準備しておくと安心です。
また、カタログ注文型は回次ごとに募集が締め切られる方式のため、検討に時間をかけすぎると次回の公募を待つことになりかねません。
導入したい製品の目星がついたら、早めに社内での意思決定を進めておくとよいでしょう。
交付申請に必要な書類
交付申請では、複数の書類の提出が求められます。
共通して必要になる主な書類は、次のとおりです。
- 従業員名簿
- 直近2期分の貸借対照表・損益計算書
- 法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は確定申告書の控え
- 人手不足の状況が分かる書類
このほか、賃上げ要件を満たす場合は賃金台帳、リースで導入する場合はリース関連の書類など、条件によって追加の提出物があります。
提出書類の一覧は、事務局が公開している「提出書類チェックシート」で確認できます。
なお申請は事業者単独ではなく、製品を扱う販売事業者との共同申請という形をとります。
書類の準備は早めに、選んだ製品の販売事業者にも相談しておくと進めやすくなります。
申請にあたっての注意点
申請を検討する際は、いくつか知っておきたい制約があります。
- カタログに掲載されていない製品は対象外
- 創業したばかりの新規開業事業者は対象外
- 既存製品からの単純な買い替えは、原則として対象外
ただし、買い替えであっても新たな機能が加わった製品であれば、対象になる場合があります。
また、交付決定を受けたあとに正当な理由なく製品を活用せず、生産性向上の目標が未達成に終わった場合、補助金の返還を求められることがある点にも注意してください。
細かな条件は「応募・交付申請の手引き」や公募要領に定められているため、申請前に必ず目を通しておきましょう。
よくある疑問
Q. どの製品を選べばよいか分かりません。
事務局の公式サイトでは、業種別の活用事例や製品カテゴリーごとの検索機能が用意されています。
自社の業務課題に近い事例を探してみると、製品選びの参考になります。
Q. 採択されなかった場合はどうなりますか?
審査の結果、不採択になることもあります。
補助金は申請すれば必ず受け取れるものではなく、事業計画の内容などをもとに審査される点に留意してください。
Q. 一般型とカタログ注文型は併願できますか?
公式サイトには、同一事業者による両枠への同時申請に関する明確な記載は見当たりません。
併願を検討する場合は、事務局に直接確認することをおすすめします。
Q. リースやレンタルで導入する製品も対象になりますか?
枠や条件によって扱いが異なる可能性があります。
購入を前提とした申請が基本になるため、リース契約を検討している場合は事前に公募要領で確認してください。
Q. 補助上限額の見直しは今後もありますか?
補助上限額は2026年3月19日に改定された経緯があります。
制度の運用状況に応じて今後も見直される可能性があるため、申請時点の最新の公募要領を必ず確認してください。
向いている事業者と注意点
この制度は、次のような事業者に向いています。
- 飲食店や小売店で、配膳・清掃など特定業務の自動化を検討している事業者
- 大掛かりな設備投資よりも、既製品の導入で人手不足を補いたい事業者
- 初めて補助金を活用する、比較的手続きの負担が軽い制度を探している事業者
一方で、カタログにない独自仕様の設備が必要な場合は、この制度では対象になりません。
補助金は審査を経て採択されるものであり、申請すれば必ず受け取れるわけではない点にも留意してください。
制度の詳細や最新の公募要領は、下記の公式ページで確認できます。
申請を検討する際は、公募要領や対象製品カタログの最新版を必ず確認したうえで進めてください。
省力化投資は、目の前の人手不足を補うだけの取り組みではありません。
限られた人員で事業を続けていくための、体制づくりの一歩でもあります。
カタログ注文型は手続きの負担が比較的軽い分、まずは小さく始めてみたい事業者にとって選びやすい制度だといえるでしょう。


