両立支援等助成金(出生時両立支援コース)とは?男性育休取得で最大77万円

国(全国対応)の補助金

男性従業員から「子どもが生まれるので育休を取りたい」と相談されたとき、制度が整っていないと戸惑う事業主も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」は、男性労働者が育休を取得しやすい職場づくりに取り組み、実際に育休を取得させた事業主に対して支給される助成金です。

全国どの都道府県の事業者でも申請でき、業種も問いません。

最大77万円という支給額が話題になることもありますが、これは複数の加算が重なった場合の金額です。

基本となる支給額と加算の仕組みを分けて理解しておくことが大切です。

制度のねらいと2つの支給パターン

この助成金は、男性の育休取得を後押しすることで、仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主を応援する目的で設けられています。

支給パターンは大きく分けて2つです。

  • 男性労働者の育児休業取得:雇用環境整備や業務体制整備を行ったうえで、男性労働者に子の出生後8週間以内の育休を取得させた場合
  • 男性労働者の育児休業取得率の上昇等:男性の育休取得率を前事業年度から30ポイント以上上昇させ、50%以上を達成するなどした場合

さらに、自社の育休取得状況を公表すると加算される仕組みもあります。

どちらの支給パターンを使うかで、対象となる事業主の規模や支給額の考え方が変わってきます。

対象となる事業主の条件

支給パターンによって、対象になる事業主の範囲が異なります。

男性労働者の育児休業取得による支給は、中小企業事業主が対象です。

一方、育休取得率の上昇等による支給は「特定事業主」が対象で、資本金3億円以下(小売業・飲食店・サービス業は5,000万円以下、卸売業は1億円以下)、または常時雇用する労働者数300人以下のいずれかを満たす事業主が該当します。

2026年度からは、この労働者数基準が業種を問わず一律300人以下に統一されており、これまで対象外だった中堅規模の事業主にも申請の余地が広がっています。

いずれの支給も、育休や短時間勤務制度を就業規則等に定めていることや、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の届出・公表が前提条件です。

一般事業主行動計画とは、従業員の仕事と子育ての両立を進めるために事業主が策定する計画のことで、労働局への届出と社内周知が必要です。

すでに「プラチナくるみん認定」を受けている事業主は、この行動計画の届出が済んでいるものとして扱われるため、あらためて手続きする必要はありません。

就業規則に育休の規定がない、あるいは古いまま更新していない事業主は、まずこの土台を整えるところから準備を始めることになります。

男性の育休取得で支給される基本額

男性労働者に実際に育休を取得させた場合の支給額は、1人目・2人目・3人目で段階的に設定されています。

対象者 必要な育休日数の目安 支給額
1人目 連続5日以上 20万円(雇用環境整備の措置を4つ以上実施した場合は30万円)
2人目 連続10日以上 10万円
3人目 連続14日以上 10万円

雇用環境整備の措置とは、育休に関する研修の実施や相談体制の整備、取得事例の収集・提供、制度の周知、業務体制の見直しなどを指します。

実施する措置の数が多いほど支給額が上がる仕組みなので、複数の取り組みをあわせて進めることが有利になります。

男性従業員が育休取得の準備について、上司と穏やかに話し合っている様子

取得率上昇と加算でめざす最大77万円

育休取得率の上昇等による支給は、1事業主あたり60万円が基本額です。

ここに、申請時点でプラチナくるみん認定を受けている場合は15万円が加算されます。

さらに、自社の育休取得状況などを厚生労働省の「両立支援のひろば」で公表すると、育児休業等に関する情報公表加算として2万円が上乗せされます。

これらをすべて満たした場合の合計額が、60万円+15万円+2万円=77万円です。

つまり77万円は、育休取得率の大幅な上昇に加え、プラチナくるみん認定と情報公表という条件がすべてそろった場合の金額であり、申請すれば誰でも受け取れる金額ではありません。

自社がどの条件を満たせそうか、事前に整理しておくと見通しが立てやすくなります。

申請までの流れと必要書類

申請にあたっては、対象となる支給パターンごとに期限が異なります。

  • 男性労働者の育児休業取得による支給:対象育休の終了日の翌日から2か月以内
  • 育休取得率の上昇等による支給:要件を満たした事業年度の翌事業年度の開始日から6か月以内
  • 情報公表加算:いずれかの支給申請と同時に行う

添付書類としては、育休制度を規定した就業規則や労使協定の写し、雇用環境整備の措置を実施したことが分かる資料、対象労働者の育休申出書、出勤簿や賃金台帳など休業の事実を確認できる書類、子の出生日を確認できる書類などが必要です。

申請先は、人事労務管理を担う部署がある事業所を管轄する労働局になります。

なお、2023年6月からは電子申請にも対応しており、雇用関係助成金ポータルを通じて書類を提出することも可能です。

紙の書類をそろえる手間を減らしたい事業主は、電子申請の利用も検討するとよいでしょう。

申請時によくある注意点

出生時両立支援コースは、準備の順番を誤ると支給要件を満たせなくなることがあります。

  • 育休が始まってから就業規則を整備しようとし、雇用環境整備の実施が育休開始前に間に合わない
  • 出勤簿や賃金台帳などの証明書類と、育休申出書の記載内容にずれがある
  • 一般事業主行動計画の届出を後回しにし、支給申請の前提条件を満たせていない
  • 情報公表加算だけを切り離して申請しようとしてしまう

情報公表加算は、単独では申請できず、必ずほかの支給申請とあわせて行う必要がある点に注意してください。

書類や体制の不備は審査の遅れにつながるため、育休が始まる前の段階で一つずつ確認しておくと安心です。

こんな事業者に向いている制度です

出生時両立支援コースは、次のような事業者に向いています。

  • 男性従業員から育休の相談を受けたが、社内の制度や体制が整っていない事業者
  • 男性の育休取得率を高めることで、採用活動や人材の定着につなげたい事業者
  • すでにプラチナくるみん認定を受けており、追加の取り組みで加算を狙える事業者

逆に、育休取得者自身の生活を支える給付を探している場合は、この助成金の対象ではありません。

雇用保険から本人に支給される育児休業給付金など、別の制度を確認する必要があります。

「両立支援等助成金」には、育休の引継ぎや職場復帰支援を対象とする「育児休業等支援コース」など、他のコースも用意されています。

出生時両立支援コースは、あくまで男性の育休取得そのものと取得率の上昇を後押しするコースである点が異なるため、自社が使いたい支援内容に合わせてコースを選ぶことが重要です。

また、支給申請日からさかのぼって1年以内に育児・介護休業法など関連法令の重大な違反があった場合は、支給されないことがあります。

支給申請の時点で法令違反について是正の指導を受けており、これに従っていない場合も対象外です。

自社の就業規則や運用が最新の法改正に対応できているか、申請前に一度点検しておくと安心です。

制度の内容や支給要件は改正されることがあるため、申請前には必ず最新の公募要領を確認してください。

とくに支給額や対象事業主の基準は年度ごとに見直されることがあるため、事前調査時点の情報をそのまま使わず、実際に申請する時点の情報で確認する姿勢が欠かせません。

制度の詳細・最新の支給要件は、必ず公式情報でご確認ください。

両立支援等助成金のご案内|厚生労働省

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