お店の中で喫煙できるようにしたいけれど、設置費用がネックで踏み出せない。
そんな飲食店経営者の声に応える制度が、厚生労働省の「受動喫煙防止対策助成金」です。
職場の受動喫煙防止のために喫煙専用室等を設置する中小企業事業主を対象に、その費用の一部を助成する制度で、全国のどの都道府県の事業者でも申請できます。
制度ができた背景
改正健康増進法により、多くの飲食店では原則屋内禁煙が求められるようになりました。
一方で、喫煙者の顧客を大切にしたい飲食店にとって、喫煙専用室の設置は選択肢のひとつです。
ただし、喫煙専用室を設けるには一定の設備基準を満たす工事が必要になり、まとまった費用がかかります。
この助成金は、その負担を軽減するために設けられている制度です。
対象になる事業者
対象になるのは、次の条件を満たす中小企業事業主です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 健康増進法上の「第二種施設」を営んでいること(飲食店など多くの事業所が該当)
- 労働者数または資本金のいずれかが、中小企業の基準に当てはまること
飲食店を中心に、屋内で喫煙室を設けたいと考えている幅広い業種の事業者が対象になり得ます。
対象になる経費
助成の対象になるのは、一定の基準を満たす専用喫煙室や、指定たばこ専用喫煙室の設置にかかる次のような経費です。
- 内装・間仕切り等の工事費
- 換気設備等の設備費
- 喫煙室に必要な備品・機械装置の費用
単に仕切りを置くだけでなく、換気性能などの基準を満たした設備であることが前提になります。

助成率と上限額
助成率・上限額は、次のように設定されています。
| 業種 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 対象経費の3分の2 | 100万円 |
| 飲食店以外 | 対象経費の2分の1 | 100万円 |
このほか、単位面積あたりの上限も設定されているため、部屋の広さによっては上限額まで使い切れないケースもあります。
令和8年度の申請期間
令和8年度の申請受付は開始されており、申請期日は令和9年1月31日とされています。
ただし、申請額が予算の上限に達した場合は、期日より前に受付が締め切られる可能性があります。
検討している場合は、早めに申請の準備を進めておくことをおすすめします。
申請までの流れ
おおまかな流れは、次のようになります。
- 設置したい喫煙専用室の仕様(換気設備等)を検討する
- 工事業者から見積りを取る
- 交付申請を行い、交付決定を受ける
- 交付決定後に工事・設置を実施する
- 完了報告を行い、助成金の支給を受ける
交付決定前に工事を発注してしまうと、対象外になる可能性があるため、順番には注意が必要です。
こんな事業者に向いている制度です
受動喫煙防止対策助成金は、こうした事業者に向いています。
- 喫煙できるお店として、顧客層を維持・拡大したい飲食店経営者
- 屋内禁煙のルールに対応しつつ、喫煙専用室の設置を検討している事業者
- 換気設備の整備にあたって、費用負担を抑えたい中小企業事業主
予算上限という時間との勝負
この助成金は、申請期日が設定されている一方で、予算の上限に達した時点で受付が締め切られる仕組みになっています。
つまり、申請期日である令和9年1月31日まで余裕があるように見えても、予算消化のペースによっては、それより前に受付が終わってしまう可能性があるということです。
「まだ期日まで時間があるから」と後回しにしていると、気づいたときには受付が終了しているという事態も考えられます。
設置を検討している場合は、工事の見積りや書類の準備を早めに進め、予算に余裕があるうちに申請を済ませておくことをおすすめします。
喫煙室を設けるという経営判断
屋内を全面禁煙にするか、喫煙専用室を設けて喫煙者にも配慮するかは、業態や客層によって答えが分かれる経営判断です。
喫煙できる環境を求めて来店する顧客が一定数いる飲食店にとって、喫煙専用室の有無は集客に直結する場合があります。
一方で、設置には工事費用だけでなく、日々の清掃や換気設備の維持管理といったランニングコストもかかります。
助成金はあくまで初期の設置費用を補うものであり、設置後の運用面まで含めて採算を検討しておくことが大切です。
従業員の受動喫煙対策としての側面
受動喫煙防止対策は、顧客だけでなく、そこで働く従業員の健康を守るための取り組みでもあります。
喫煙専用室を適切に設置し、きちんと区画・換気することは、非喫煙者の従業員が煙にさらされる機会を減らすことにつながります。
経営判断としての集客面だけでなく、働く環境を整えるという観点からも、この助成金の活用を検討する意義があります。
よくある疑問
Q. 飲食店以外の業種でも対象になりますか?
対象になります。
ただし助成率は飲食店の場合と異なり、対象経費の2分の1になります。
Q. すでに設置した喫煙室の工事費もさかのぼって対象になりますか?
原則として、交付決定後に行った工事・設置が対象です。
すでに完了している工事は対象にならない可能性が高いため、事前に確認してください。
Q. 上限額の100万円まで、必ず受け取れますか?
対象経費の一定割合という助成率に加え、単位面積あたりの上限も設定されています。
工事内容によっては上限額に届かないこともあります。
設備基準を満たす業者選びの重要性
喫煙専用室の助成を受けるには、単に仕切りを設けるだけでなく、換気性能などの技術基準を満たした設備であることが前提になります。
基準を満たさない工事を行ってしまうと、助成の対象外になるだけでなく、そもそも法令上求められる受動喫煙防止の効果も得られません。
工事を依頼する業者を選ぶ際は、受動喫煙防止対策の設備基準に対応した施工実績があるかどうかを、事前に確認しておくことが大切です。
見積り段階で「この仕様は助成金の対象基準を満たしているか」を業者に確認しておくと、あとから対象外と判断されるリスクを減らせます。
面積によって変わる助成の上限
喫煙専用室の助成には、対象経費の割合による上限額だけでなく、単位面積あたりの上限も設定されています。
そのため、広い喫煙室を作ろうとするほど、面積に応じた上限に先に達してしまい、想定していたよりも助成額が伸びないことがあります。
設計の段階で、必要最低限の広さと、助成額の見込みをあわせて試算しておくと、費用対効果の高い設置計画を立てやすくなります。
他の制度とあわせて検討する視点
店舗の改装や設備投資を検討している場合、受動喫煙防止対策だけを単独で進めるのではなく、他の補助金・助成金とあわせて計画を立てることも選択肢のひとつです。
たとえば、店舗改装や省力化のための設備投資にあわせて喫煙室の設置を計画すれば、工事を一度にまとめて進められ、全体の段取りも効率化できます。
自社が使える他の制度がないか、あわせて確認しておくとよいでしょう。
制度の詳細・最新の申請要件は、必ず公式情報でご確認ください。
出典:職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)|厚生労働省



