自社単独ではなく団体で取り組む助成金
働き方改革推進支援助成金には複数のコースがありますが、「団体推進コース」は少し性格が異なります。
対象は個々の中小企業ではなく、事業協同組合や商工会、商工会議所といった中小企業の事業主団体です。
自社が加入している団体がこの助成金を活用し、構成員である会員企業に対して時間外労働の削減や賃金引上げに向けた支援を行う、という仕組みになっています。
つまり経営者個人がこの助成金に直接申請するわけではなく、所属団体を通じて間接的に恩恵を受ける制度です。
自社に直接お金が入るコースではない点は、最初に理解しておく必要があります。
同じ働き方改革推進支援助成金の中には、個々の中小企業が直接申請できる「労働時間短縮・年休促進支援コース」もあります。
このコースは、勤怠管理システムの導入やコンサルティング費用など、自社の取り組みに対して助成を受けるものです。
一方で団体推進コースは、申請主体が事業主団体であり、支援の対象も団体を構成する複数の企業にまたがります。
自社だけで完結する取り組みではなく、業界内・地域内の複数企業を巻き込んだ改善事業である点が大きな違いです。
「自社の勤怠システムを入れたい」という場合は個別企業向けコース、「業界全体で残業削減や賃上げの機運を作りたい」という場合は団体推進コース、と整理すると分かりやすくなります。
どちらのコースも同じ制度の枠組みの中にありますが、申請者も支援の広がり方もまったく異なる点に注意してください。
対象となる事業主団体の要件
団体推進コースを利用できるのは、次のような要件を満たす中小企業事業主団体等です。
- 事業協同組合、商工会議所、商工会、商店街振興組合、一般社団法人などであること
- 常時使用する労働者数が10人以上の構成事業主が3者以上いること
- 1事業年度以上の活動実績があること
- 構成事業主のうち中小企業が占める割合が、特定業種等の団体は5分の1超、その他の団体は2分の1超であること
2026年度からは「常時使用する労働者数が10人以上の構成事業主が3者以上」という要件が加わっており、以前の年度と条件が異なる可能性があります。
自社が加入している団体がこの要件に当てはまるかどうかは、団体の事務局や商工会・商工会議所の担当窓口に確認するのが確実です。
業種を横断した団体だけでなく、特定業種に特化した団体も対象に含まれるため、業界団体に加入している場合はあわせて確認しておきたいところです。
なお、ここでいう「中小企業」は業種ごとに資本金や従業員数の基準が定められており、飲食業やサービス業、製造業などで基準が異なります。
自社が該当するかどうかは、業種別の定義を踏まえて団体側と確認するとよいでしょう。
対象になる改善事業の内容
助成対象となるのは、構成事業主である会員企業の時間外労働削減や賃金引上げに向けた、次のような改善事業です。
- 労働時間の実態や課題を把握するための市場調査
- 新しいビジネスモデルの開発に関する調査・検討
- 構成事業主向けのセミナーや研修の開催
- 専門家による個別企業への巡回指導
- 構成事業主が共同で利用できる設備・機器の導入
- 人材確保に向けた取り組み
これらは団体が主体となって企画・実施するものであり、会員企業は団体を通じてこうした支援を受ける形になります。
成果目標として、構成事業主の2分の1以上が改善事業を活用することが求められる点も、押さえておきたいポイントです。
改善事業の企画段階では、会員企業へのヒアリングやアンケートを行い、実際に困っている業務課題を吸い上げたうえで内容を組み立てる団体が多いようです。
一部の会員企業だけが恩恵を受ける内容ではなく、できるだけ幅広い構成事業主に活用してもらえる事業設計にすることが、成果目標の達成にもつながります。

助成上限額の考え方
団体推進コースの助成額は、次のいずれか低い方の額が支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成の基準 | 対象経費の合計額と、総事業費から収入控除額を差し引いた額のいずれか低い額 |
| 助成上限額 | 成果目標の達成状況等に応じて最大500万円 |
| 助成率 | 公式情報では助成率の明示は確認できません(定額方式) |
上限額は取り組み内容や成果目標の達成度合いによって変動する仕組みです。
「一律で500万円もらえる」という制度ではなく、あくまで上限額として理解しておく必要があります。
具体的な支給額の算定方法は、交付要綱など公式情報の最新版で確認することをおすすめします。
申請期間と受付状況
2026年度の団体推進コースの申請期間は、次のとおりです。
- 受付開始:2026年4月13日(月)
- 交付申請期限:2026年11月30日(月)午後5時
働き方改革推進支援助成金は国の予算額に制約される制度のため、期限より前に受付が締め切られる場合があります。
団体としての取り組みは企画や合意形成に時間がかかりやすいため、検討を始める場合はできるだけ早い段階で、団体の事務局を通じて労働局へ相談することが望ましいといえます。
自社にできる関わり方と申請までの流れ
団体推進コース自体は事業主団体が申請する制度ですが、構成員企業である個々の中小企業にも関わり方があります。
- 加入している事業協同組合や商工会・商工会議所に、この助成金の活用予定があるか確認する
- 団体が実施するセミナーや巡回指導、共同設備の導入計画があれば積極的に参加する
- 自社の時間外労働や賃金の課題を団体側に共有し、改善事業の企画に反映してもらう
自社単独での取り組みが難しい場合でも、団体を通じた支援であれば、コンサルティングや専門家派遣といった支援を受けやすくなる面もあります。
まずは所属団体に「この制度を知っているか」「活用予定はあるか」を聞いてみるところから始めるとよいでしょう。
団体推進コースの活用を検討する場合、おおまかには次のような流れで進みます。
- 団体が要件(構成員数、活動実績、中小企業の割合など)を満たしているか確認する
- 構成事業主の課題を踏まえ、改善事業の内容と成果目標を検討する
- 交付申請を行い、労働局の交付決定を受ける
- 改善事業を実施し、構成事業主への活用状況を記録する
- 成果目標の達成状況とあわせて実績報告を行う
団体としての合意形成や事務手続きが必要になるため、個別企業向けコースに比べて準備期間が長くなりやすい点も想定しておきましょう。
途中で会員企業へのアンケートや意見集約が必要になる場合もあるため、団体の事務局とは早い段階から情報を共有しておくと進めやすくなります。
こんな団体・事業者に向いている制度です
団体推進コースは、次のようなケースで活用が検討しやすい制度です。
- 加入企業の多くが人手不足や長時間労働の課題を抱えている事業協同組合や商工会
- 会員企業向けに勤怠管理や労務改善のセミナーを企画したい団体
- 業界全体で賃上げの機運を作りたいと考えている商工会議所や業種団体
自社単独では取り組みにくい課題でも、団体を通じて複数企業が同時に改善へ動くことで、地域や業界全体への波及効果が期待できます。
申請前には必ず、団体の事務局や都道府県労働局を通じて最新の公募要領・交付要綱を確認してください。
出典:働き方改革推進支援助成金|厚生労働省
自社が加入する団体がこの助成金を知らない場合、まずは情報を共有するところから始めてみるのも一つの方法です。
団体推進コースは会員企業全体の底上げにつながる制度のため、早めに動くほど選択肢が広がります。
時間外労働の削減や賃上げは一朝一夕には進みませんが、団体としての取り組みがきっかけになることもあります。
気になる場合は、所属する事業協同組合や商工会・商工会議所の担当窓口に問い合わせてみてください。


