事業協同組合等が構成員の労働環境を底上げ「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」

国(全国対応)の補助金

自社だけでは取り組みにくい労働環境の改善を、加入している組合を通じて進められる制度があります。

厚生労働省の「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」です。

この制度は個人事業主や中小企業が直接申請するものではなく、事業協同組合や商工組合などの事業主団体が、構成員である中小企業のために取り組む事業を助成対象としています。

つまり読者自身が加入している組合等が窓口となり、その活動を通じて間接的に恩恵を受ける仕組みです。

直接申請ではなく団体経由という位置づけ

人材確保等支援助成金には複数のコースがあり、雇用管理制度コースやテレワークコース、外国人労働者就労環境整備コース、建設分野の宿舎等助成コースなど、個々の事業主が直接申請できるコースが知られています。

中小企業団体助成コースは、これらとは対象がはっきり異なります。

申請者は個々の事業主ではなく、都道府県知事から改善計画の認定を受けた事業協同組合等(以下「認定組合等」)です。

自社単独では実施しにくい研修や調査、広報活動を、組合単位でまとめて行い、その経費の一部を助成金でまかなう建てつけになっています。

個人事業主や中小企業経営者としては、「自分で申請する制度」ではなく、「加入先の組合が活用できる制度」として理解しておくと分かりやすいでしょう。

どんな団体が対象になるのか

助成の対象になるのは、以下のような事業協同組合等です。

  • 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
  • 商工組合、商工組合連合会
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 生活衛生同業組合
  • 一定の要件を満たす一般社団法人など

これらの団体が、中小企業労働力確保法にもとづく「改善計画」の認定を都道府県知事から受けていることが前提条件です。

改善計画とは、構成中小企業者の労働環境改善、福利厚生の充実、募集方法の改善などに関する計画を指します。

この認定を受けたうえで、労働局に対して受給資格の認定申請を行う流れになります。

助成対象になる事業の内容

助成対象となるのは、「中小企業労働環境向上事業」と呼ばれる一連の取り組みです。

大きく分けると、次のような事業が想定されています。

  1. 計画策定・調査事業(労働環境向上検討委員会の開催、雇用管理の実態調査など)
  2. 安定的雇用確保事業(労働時間の設定改善、募集・採用の改善、教育訓練の充実など)
  3. 職場定着事業(職業相談者の配置、福利厚生の充実など)
  4. モデル事業普及活動事業(取り組みの成果を他の構成企業に広める活動)

具体的には、マニュアルや好事例集の作成配布、各種セミナー・研究会の実施、モデル企業の見学会、団体広報誌やガイドブックの作成配布などが該当します。

公式の実施要領では、計画策定・調査事業とモデル事業普及活動事業は必須の取り組みとされ、安定的雇用確保事業か職場定着事業のいずれかも実施する必要があるとされています。

労働環境向上推進員の配置も対象

助成対象には、事業の実施費用だけでなく、「労働環境向上推進員」の設置にかかる費用も含まれます。

労働環境向上推進員とは、雇用管理に関する専門的な知識・経験を持ち、組合の常勤職員の所定労働日数の6割以上をこの業務にあてる担当者のことです。

組合の役職員から選任する場合と、外部の専門家に委嘱する場合のどちらも認められています。

この推進員の人件費や委嘱費も、後述する助成額の計算に組み込まれる点が、この制度の特徴のひとつです。

助成額と支給限度額の目安

助成額は、事業実施にかかった費用の2/3が基本です。

ただし団体の規模に応じて、支給限度額が設けられています。

認定組合等の区分(構成中小企業者数) 支給限度額
大規模(500以上) 1,000万円
中規模(100以上500未満) 800万円
小規模(100未満) 600万円

労働環境向上推進員の設置費については、実際に要した費用と上記の合計額のいずれか低いほうに2/3を乗じた額(400万円が上限)が加算される仕組みです。

支給期間は1事業実施期間あたり1年間とされています。

なお、会議費のうち茶菓代は1回あたり150円/人(一定の場合500円/人)が上限、宿泊費は1日15,000円/人が上限など、費目ごとに細かな助成基準が定められています。

実際の対象経費や上限額は、事業ごとに公式の実施要領で確認する必要があります。

申請から支給までの大まかな流れ

制度を利用するまでの流れは、おおむね以下のとおりです。

  1. 都道府県知事に改善計画を申請し、認定を受ける
  2. 事業実施期間の開始予定日のおおむね1か月前までに、労働局へ受給資格認定申請書を提出する
  3. 労働局から受給資格の認定を受け、事業を実施する
  4. 事業実施期間終了後2か月以内に、支給申請書と実施状況報告書等を提出する
  5. 労働局の審査を経て、支給決定通知を受ける

過去にこの助成金や、前身にあたる中小企業人材確保推進事業助成金を受給した組合等については、前回の事業実施終了から一定期間(3年)を空ける必要がある点にも注意が必要です。

事業協同組合の会議室で組合担当者と構成中小企業の経営者が資料を囲んで打ち合わせをしている様子

現時点で確認できる募集の考え方

この助成金は、特定の期間だけ募集を行う公募型の補助金とは仕組みが異なります。

雇用保険法にもとづく雇用安定事業のひとつとして運用されており、改善計画の認定を受けた組合等が、事業実施期間開始予定日の1か月前までに随時申請する形が基本です。

そのため、年度ごとに「〇月〇日から〇月〇日まで」といった一律の募集期間が設定される制度ではありません。

公式の実施要領(令和4年4月1日改正版)を確認した時点では、制度の廃止や受付終了を示す記載は見当たりませんでした。

ただし、実施要領は改正が重ねられており、最新の細かな取扱いや年度ごとの運用状況までは、この記事の情報だけで確定できません。

詳しい募集期間や申請の可否については、厚生労働省の最新の実施要領、またはお近くの労働局にご確認ください。

どのような団体・事業者に関係するか

この制度が直接関係するのは、事業協同組合や商工組合などの事業主団体です。

個人事業主や中小企業経営者は、自ら申請するのではなく、加入している組合等にこの制度の活用を相談することで、間接的にメリットを得られる立場になります。

構成企業向けの研修や、雇用管理改善のためのセミナーが少ないと感じている場合、あるいは組合として採用力を高める広報活動を検討している場合には、加入先の組合の担当窓口に「中小企業団体助成コースの活用予定はあるか」を尋ねてみる価値があるでしょう。

雇用管理制度コースやテレワークコースなど、個々の事業主が直接使えるコースとは対象が異なるため、混同しないよう注意してください。

公式情報の確認先

制度の詳細や最新の様式は、以下の厚生労働省公式ページで確認できます。

人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)公式ページ

申請にあたっては、改善計画の認定要件や事業実施計画書の作成方法など、実務的に確認すべき点が多くあります。

実際に活用を検討する場合は、必ず最新の実施要領や様式を確認したうえで、管轄の労働局に相談することをおすすめします。

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