外国人材の定着を後押しする一時金
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行に不慣れなことが少なくありません。
言語の違いから、労働条件をめぐるトラブルにつながることもあります。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、こうした事情に配慮した職場づくりに取り組む事業主を助成する制度です。
雇用保険の被保険者となる外国人労働者を雇っている事業主なら、業種を問わず対象になり得ます。
雇用労務責任者の設置や、就業規則の多言語化といった、外国人材の受け入れにともなう社内整備にかかる費用の一部を、助成金でまかなえる点が特徴です。
この制度は2026年10月ごろに支給額の見直しが予定されているため、申請を検討している方は早めの準備が重要です(詳細は後述します)。
対象となる事業主と外国人労働者の範囲
対象となるのは、雇用保険の適用事業所を持つ事業主です。
外国人労働者を直接雇用し、外国人雇用状況届出を適正に行っていることが前提となります。
ここでいう外国人労働者は、次のすべてに当てはまる人を指します。
- 外国人雇用状況届出の対象者であること
- 事業主と直接、労働契約を結んでいること
- 雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)であること
在留資格の種類は問われませんが、特別永住者や「外交」「公用」の在留資格を持つ人は対象外です。
技能実習生や特定技能外国人であっても、雇用保険の被保険者であれば対象に含まれます。
過去にこのコースを受給した事業主は、最後の支給決定日の翌日から3年が経過していることも条件になります。
短期間だけ外国人労働者を雇う予定の事業所は、離職率の算定期間中に継続雇用の実態が求められるため、事前に対象者の見込みを確認しておくと安心です。
助成の対象となる5つの整備措置
助成金を受け取るには、就労環境整備計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
対象となる措置は次の5つです。
イとロは必須で、これに加えてハ〜ホのいずれか1つ以上を導入・実施します。
- イ.雇用労務責任者の選任(外国人労働者と年1回以上面談し、相談対応の窓口となる担当者を置く)
- ロ.就業規則等の多言語化(就業規則や労働条件通知書などを、外国人労働者の母語や「やさしい日本語」で整備する)
- ハ.苦情・相談体制の整備(就業規則等を変更し、外国人労働者向けの相談窓口を新設する)
- ニ.一時帰国のための休暇制度の整備(年1回以上、連続5日以上の有給休暇を取得できる制度を設ける)
- ホ.社内マニュアル・標識類等の多言語化(安全衛生やハラスメント防止に関する資料などを多言語化する)
雇用労務責任者には特別な資格は不要です。
人事担当者などが兼任しても差し支えありません。
なお、退職予定の外国人労働者だけを対象にした措置は、支給対象になりません。
多言語化や相談体制の整備を外部の翻訳会社や社労士事務所などに委託するケースも多いでしょう。
その場合、通訳費や翻訳料、翻訳機の導入費などが支給対象経費として想定されています。
ただし、計画を労働局へ提出する前に委託契約を結んだり、費用の一部を支払ったりしていると、その措置は支給対象外になるため注意が必要です。
支給額と受給までの流れ
支給額は、導入した措置1つにつき20万円です。
イ〜ホのうち複数を導入すれば加算され、上限は80万円となります。
| 導入する措置の数 | 支給額の目安 |
|---|---|
| 必須2措置のみ(イ・ロ) | 40万円 |
| 必須2措置+選択1措置 | 60万円 |
| 必須2措置+選択3措置すべて | 80万円 |
受給までは、おおむね次の流れで進みます。
- 就労環境整備計画を作成し、計画期間の開始日から6か月前〜1か月前までに労働局へ提出
- 認定を受けた計画に沿って、措置を導入・実施
- 措置の実施日の翌日から6か月間の「外国人労働者離職率」を算定
- 算定期間終了後2か月以内に支給申請
- 審査を経て助成金が支給される
支給は事業所単位ではなく、企業(事業主)単位で行われる点も押さえておきたいところです。
複数の事業所を持つ企業であっても、1つの計画で受け取れる助成金は、本社を通じてまとめて申請する形になります。
また、同じ事業主が複数の計画を同時に提出することはできません。
すでに認定を受けた計画がある場合は、その計画に関する支給決定日(または不支給決定日)の翌日以降でなければ、新たな計画を出せない点にも注意しましょう。
申請の条件と離職率の基準
受給には、就労環境整備計画の初日の6か月前から計画期間末日までの間、外国人労働者を解雇等していないことが求められます。
加えて、次の離職率の基準を満たす必要があります。
- 外国人労働者の離職率が15%以下であること(算定期間の初日の外国人労働者数が2〜10人の場合は、離職者数が1人以下であること)
- 算定期間の末日まで継続して雇用している外国人労働者が1人以上いること
外国人労働者雇用労務責任者講習を受講し、一定期間解雇等をしていない場合は、これらの確認が省略される取り扱いもあります。
支給申請には、事業所確認票や外国人労働者名簿、離職理由が分かる書類、雇用労務責任者による面談結果の一覧表など、複数の書類提出が必要です。
多言語化した就業規則や、一時帰国休暇を取得したことが分かる出勤簿・賃金台帳なども、導入した措置に応じて求められます。
書類の不備や審査内容によっては、支給決定まで時間がかかることもあるため、余裕をもって準備することをおすすめします。
なお、認定後の計画内容を変更する場合は、変更内容ごとに定められた期限までに、変更届を労働局へ提出しなければなりません。
届け出をせずに、計画と異なる措置を導入・実施すると、原則として支給対象から外れてしまうため気をつけましょう。

2026年10月の制度見直しと申請時の注意点
この制度をめぐっては、2026年8月から9月にかけて、支給額等を見直す省令案への意見公募(パブリックコメント)が行われました。
意見公募段階の情報によると、支給額を必須2措置で20万円、一時帰国のための休暇制度を追加した場合にさらに5万円を加える形とし、上限を現行の80万円から25万円程度に引き下げる方向が示されています。
あわせて、多言語化に関する措置の整理や、離職率の算定期間の見直しなども検討されているとみられます。
これらは本記事作成時点(2026年9月)でまだ正式に公布された内容ではなく、2026年10月ごろに公布・施行される見込みとされています。
そのため、現行の最大80万円という支給額は、施行前に計画を提出し要件を満たした場合に適用される可能性がある内容です。
制度の適用時期や金額の詳細は変更される可能性があるため、申請を検討する事業主は、就労環境整備計画を提出する前に、必ず厚生労働省の公式ページで最新の支給額・要件を確認してください。
制度を所管する都道府県労働局やハローワークに、直接問い合わせるのも確実な方法です。
外国人材の受け入れ体制を整えたいと考えている事業主にとって、雇用労務責任者の選任や就業規則の多言語化は、助成金の有無にかかわらず取り組む価値がある内容といえます。
すでに外国人労働者を雇用していて、これから相談体制や休暇制度を整えたいと考えている中小企業には、特に利用価値がある制度です。
一方で、就労環境整備計画の作成から支給申請まで半年以上かかるケースが多く、外国人労働者を新規に採用したばかりの事業所は、離職率算定期間などのスケジュールを慎重に確認しておく必要があります。


