事業承継とM&Aを後押しする国の補助金
後継者不在に悩む事業者にとって、M&Aによる第三者への引き継ぎは選択肢のひとつです。
ただし、専門家への依頼費用や、承継後の設備投資には少なくない資金が必要になります。
そうした負担を軽くする国の制度が「事業承継・M&A補助金」です。
全国の中小企業が対象で、都道府県をまたいだM&Aでも利用できます。
実施主体と制度の目的
事業承継・M&A補助金は、中小企業庁が実施する制度です。
事務局は中小企業基盤整備機構が担っています。
中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、事業承継に際しての設備投資や、M&A・PMI(統合後経営)の専門家活用費用等を支援することを目的としています。
対象になる取り組み
この補助金には、複数の申請枠が設けられています。
- 事業承継後の設備投資等を支援する枠
- M&Aにおける専門家活用費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用等)を支援する枠
- M&A後のPMI(経営統合作業)にかかる費用を支援する枠
枠によって対象になる取り組みや経費が異なるため、自社の状況に合わせて申請枠を選ぶ必要があります。
補助額の目安
補助額は申請枠によって幅があります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 補助額 | 数百万円〜最大2,000万円程度 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
上限額は枠ごとに定められており、事業承継促進枠やPMI推進枠など、複数の枠が用意されています。
自社が使える枠と上限額は、公式の公募要領で確認してください。

継続的に行われる公募
事業承継・M&A補助金は、年に複数回にわたって公募が行われています。
直近では第15次公募が2026年6月19日から7月24日まで実施され、第16次公募の公募要領が2026年9月4日に公開されました。
過去の実績から、今後も年に数回のペースで継続的に公募が行われる見込みです。
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要になるため、早めに取得しておくと安心です。
申請までの流れ
申請は、おおむね次のように進みます。
- GビズIDプライムアカウントを取得する
- 承継・M&Aの方向性や、活用したい専門家を検討する
- 事業計画書を作成する
- 電子申請(Jグランツ)から申請する
- 採択後、取り組みを実施し、実績報告を行う
申請は電子申請(Jグランツ)のみで受け付けられており、書面での申請はできません。
申請前に整理しておきたいこと
申請を検討する際は、次の点を整理しておくとよいでしょう。
- 承継の方向性(親族内承継・第三者承継・M&Aなど)
- 依頼を検討している専門家(M&A仲介事業者、FAなど)
- 想定している設備投資やPMIの内容
- GビズIDプライムアカウントの取得状況
年に複数回ある公募のとらえ方
事業承継・M&A補助金は、単発で終わる制度ではなく、年に数回のペースで公募が繰り返されている点が特徴です。
2026年に入ってからも、第14次(1月30日公募要領公開)、第15次(6月19日〜7月24日)、第16次(9月4日公募要領公開)と、継続的に公募が行われています。
1回の締切に間に合わなくても、次の公募に向けて準備を進める余地がある制度といえます。
PMI(統合後経営)を支援する枠の意味
M&Aは、契約が成立して終わりではありません。
買収後に組織や業務プロセスをどう統合するか、いわゆる「PMI」の段階でつまずくケースも少なくないといわれています。
この補助金にPMI推進枠が設けられているのは、M&A成立後の統合作業にも専門家の支援が必要になる場面が多いためです。
M&Aを検討する段階から、統合後の運営体制までを見据えて、この補助金の活用を計画しておくとよいでしょう。
こんな事業者に向いている制度です
事業承継・M&A補助金は、こうした事業者に向いています。
- 後継者不在を背景に、M&Aによる第三者承継を検討している経営者
- 事業承継後の設備投資を計画している中小企業
- M&A後の経営統合(PMI)に専門家の力を借りたい事業者
なお、都道府県によっては、事業承継に関する独自の助成金を用意している場合もあります。
国の制度とあわせて、地域から調べるページで、事業所のある地域の制度も確認しておくと選択肢が広がります。
認定経営革新等支援機関との連携も選択肢に
事業承継・M&Aの計画づくりでは、認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関・商工会議所など、国から認定を受けた専門家)のサポートを受けながら進めるケースも一般的です。
申請書類の作成や、M&Aの相手先探しに不安がある場合は、こうした支援機関に相談する方法もあります。
複数の専門家に相談し、自社の状況に合った進め方を比較検討することも大切です。
よくある疑問
Q. 親族内承継でも申請できますか?
枠によって対象になる取り組みが異なります。
自社の承継の形がどの枠に該当するか、公式の公募要領で確認してください。
Q. 何回でも応募できますか?
過去の採択状況などにより条件が異なる場合があります。
詳細は公式情報で確認してください。
Q. 都道府県の事業承継助成金と併用できますか?
制度ごとに併用の可否が定められています。
事前に両方の実施主体に確認することをおすすめします。
Q. M&Aの相手がまだ決まっていなくても申請できますか?
枠によって、相手探しの段階から使えるかどうかが異なります。
専門家探しの初期費用が対象になる枠もあるため、公式の公募要領で確認してください。
Q. 補助金の交付までどのくらいの期間がかかりますか?
公募締切から採択発表、交付決定までには一定の審査期間が必要です。
取り組みのスケジュールは、余裕を持って計画しておくことをおすすめします。
Q. 補助対象になる専門家は決まっていますか?
枠ごとに、対象になる専門家やサービスの要件が定められている場合があります。
依頼を検討している専門家が対象に含まれるか、事前に確認することをおすすめします。
Q. 承継後、すぐに事業を売却してもよいですか?
補助事業には一定の実施期間や、事業継続に関する要件が設けられている場合があります。
短期間での売却を検討している場合は、事前に要件を確認してください。
制度の詳細・最新の申請要件は、必ず公式情報でご確認ください。
出典:事業承継・M&A補助金公式サイト

事業承継やM&Aは、経営者一人で抱え込まず、早い段階から専門家や公的機関に相談することで選択肢が広がるテーマです。
補助金の活用も、その相談の中で見えてくることが少なくありません。
各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターなど、無料で相談できる公的窓口もあわせて活用してみてください。
準備を始める時期が早いほど、選べる選択肢は広がります。
焦らず、自社に合った承継の形を見極めていきましょう。
公募のたびに要件が見直されることもあるため、最新情報の確認を習慣づけておくと安心です。
専門家と二人三脚で進めることで、承継後の経営もスムーズに引き継げます。


