工場や店舗の空調・ボイラーなどの設備を、省エネ性能の高いものへ替えたい。
そう考えても、初期費用の大きさで足踏みする事業者は少なくありません。
環境省が実施する「SHIFT事業」は、そうした設備更新やDXを使った運用改善を後押しする国の補助金です。
工場・事業場を持つ事業者であれば、中小企業も対象に含まれます。
補助率や上限額は事業の内容によって幅があるため、まずは制度の全体像を押さえておくことが大切です。
誰のための制度か
SHIFT事業の正式名称は「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業」といいます。
以前は「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」という名称で実施されていた制度で、事業のねらいは大きく変わっていません。
実施しているのは環境省です。
公募の受付や審査といった実務は、執行団体である一般社団法人温室効果ガス審査協会が担っています。
制度の目的は、工場・事業場における先導的な脱炭素化の事例をつくり、その知見を広く公表して横展開を図ることです。
積み上げた知見を他の事業者にも役立ててもらい、社会全体の省CO2化を後押しする狙いがあります。
対象地域は全国です。
工場や事業場を持つ民間事業者等であれば申請でき、中小企業等も対象に含まれると環境省の発表資料に明記されています。
「脱炭素」と聞くと大企業の巨大プロジェクトを思い浮かべるかもしれません。
ですが実際には、地域の工場や店舗を運営する中小規模の事業者も対象として想定されている制度です。
二つの支援メニューと補助率
SHIFT事業には、性格の異なる二つの事業類型があります。
大がかりな設備更新だけでなく、比較的取り組みやすいDX活用の運用改善まで幅がある点が特徴です。
| 事業類型 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 省CO2型システムへの改修支援事業 | 1/3 | CO2排出削減量に応じて1億円または5億円 |
| DX型CO2削減対策実行支援事業 | 3/4 | 200万円 |
補助上限だけを見ると大企業向けの制度に思えるかもしれません。
しかし対象者にはどちらも「中小企業等」と明記されており、規模の小さい事業者でも申請しやすい設計になっています。
まとまった設備投資を考えている事業者は改修支援事業、まずは運用面の見直しから始めたい事業者はDX型実行支援事業、というように使い分けるイメージです。
どちらも国の予算にもとづく補助金である以上、審査を経て採択されなければ交付されません。
補助率も定額補助ではなく、対象経費に一定の割合を掛けた金額が上限の範囲内で補助される仕組みです。
省CO2型システムへの改修支援事業の対象条件
こちらは、電化・燃料転換・熱回収などによって、CO2排出量を大きく減らす設備導入を支援する枠です。
対象になるのは、CO2排出量を工場・事業場単位で15%以上、または主要なシステム系統で30%以上削減する取り組みです。
事業期間は3カ年以内とされています。
なお、蒸気システムや空調システム、給湯システム、工業炉、CGSに関する単純な高効率化改修は、補助対象外とされている点に注意が必要です。
既存の設備をそのまま高効率な機種に入れ替えるだけでは、対象と認められない場合があるということです。
複数の事業者が共同で省CO2型設備を導入する取り組みや、既存システムに設備を追加して省CO2化を図る取り組みも、対象に含まれます。
自社単独での設備更新だけでなく、取引先や同じ工業団地内の事業者と連携した取り組みも視野に入れられる制度といえます。
補助上限額が「1億円または5億円」と幅を持たせて示されているのは、想定されるCO2排出削減量によって上限が変わる仕組みのためです。
具体的にどちらの上限が適用されるかは、公募要領で確認する必要があります。

DX型CO2削減対策実行支援事業の使い道
こちらは、DXシステムを用いた運用改善によって、即効性のある省CO2化を目指す枠です。
運転管理データに基づいて効果的な改修設計を行うような、モデル的な取り組みも対象になります。
事業期間は2カ年以内です。
補助上限額は200万円と、改修支援事業に比べて小さめです。
そのぶん補助率は3/4と高く、対象経費の大部分をカバーしやすい枠になっています。
大がかりな設備投資に踏み切る前に、まず運用データを可視化して省CO2の余地を洗い出したい事業者にも向いています。
事業期間は2カ年以内とされているため、比較的短いスパンで成果を出すことが求められる点も特徴です。
設備そのものを入れ替えるのではなく、既存設備の使い方や制御方法を見直すことで省CO2化を図りたい場合に検討したい枠といえます。
令和8年度の公募スケジュール
令和8年度のSHIFT事業は、令和8年6月12日に公募が始まりました。
環境省の発表によると、当初の締切は次のとおりです。
- 省CO2型システムへの改修支援事業:一次公募締切が7月15日、二次公募締切が8月26日(いずれも正午)
- DX型CO2削減対策実行支援事業:公募締切が8月26日正午
執行団体のホームページでは、その後9月11日から実行支援事業の二次公募と、改修支援事業の三次公募にあたる追加の公募が開始された旨のお知らせも掲載されています。
改修支援事業については、一次公募の採択者一覧が9月18日付で発表されており、令和8年度の制度自体は本稿執筆時点(2026年9月25日)でも継続していることが確認できます。
一方で、追加公募の正確な締切日は、本稿の時点では公式資料から文字情報として確認できませんでした。
公募は複数回に分けて実施され、各回で締切や採択枠が異なる場合があります。
申請を検討する事業者は、必ず執行団体の公式サイトで、現時点の公募回・締切・残り予算の状況を確認してください。
SHIFT事業公式ページ(一般社団法人温室効果ガス審査協会)
申請までの流れと向いている事業者
SHIFT事業は、おおむね次のような流れで進みます。
- 執行団体のサイトで最新の公募要領を確認する
- 自社の工場・事業場がCO2削減の対象条件を満たすか確認する
- 事業類型を選び、必要書類とCO2削減計画を準備する
- 公募期間内に電子申請システム等で応募する
- 審査を経て採択された場合、交付決定後に設備導入や取り組みを実施する
補助率・補助上限額とも、事業類型によって差が大きいことが分かります。
自社の取り組み内容が、改修支援事業とDX型実行支援事業のどちらに近いかを、まず整理しておくとよいでしょう。
申請条件や補助対象経費の細部は、公募要領で随時更新される可能性があります。
応募の直前には、公式サイトで公募要領や様式の最新版を必ず確認してください。
最後に、SHIFT事業の活用をイメージしやすいよう整理しておきます。
- 工場・事業場のボイラーや空調など、エネルギー多消費設備の更新を検討している事業者
- CO2排出量を工場・事業場単位で大きく減らす投資を計画している中小企業
- 大規模投資の前に、DXによる運用改善から着手したい事業者
- 取引先や近隣の事業者と共同で省CO2化に取り組みたい事業者
いずれの場合も、まず自社の取り組みが改修支援事業とDX型実行支援事業のどちらに当てはまるかを見極めることが出発点になります。
補助額や補助率の大きさだけで判断せず、事業期間や対象条件を含めて、自社の計画に合う枠かどうかを確認しておくと安心です。
制度の詳細や最新の公募状況は、申請前に必ず公式サイトでご確認ください。


