後継者探しにかかる専門家費用を後押しする制度
事業承継を考え始めると、株価算定やデューデリジェンスなど専門家への依頼が欠かせません。
その費用は決して安くなく、二の足を踏む経営者も多いはずです。
神奈川県事業承継補助金は、こうした専門家費用の一部を補助する制度です。
親族への承継、第三者へのM&Aによる承継のどちらも対象になります。
制度がめざす狙い
神奈川県は、物価高騰や人手不足等の影響で事業継続に課題を抱える中小企業に着目しています。
優れた経営資源を持ちながらも、先行きに不安を感じる企業を後押しする狙いがあるとされます。
事業承継が進めば、培ってきた技術やノウハウ、雇用を地域に残すことにもつながります。
補助金は、そうした承継の一歩を後押しする専門家費用の支援策という位置づけです。
どんな事業者が対象になるか
対象は神奈川県内の中小企業者です。
具体的には、中小企業支援法第2条第1項第1号から第3号までに規定する中小企業者であることが条件です。
業種によって法律上の中小企業者の範囲が異なるため、資本金や従業員数の要件は自社の業種に沿って確認してください。
小規模事業者にあたるかどうかで補助率が変わります。
小規模事業者の判断基準は業種によって従業員数の線引きが異なるため、自社が該当するか迷う場合は事前相談で確認しておくと安心です。
事業承継そのものをこれから検討し始めた段階の経営者にも利用しやすい制度といえます。
小規模事業者の判定基準を確認する
自社が小規模事業者にあたるかどうかは、業種ごとに従業員数の基準が定められています。
| 業種区分 | 小規模事業者の基準 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 常時使用する従業員5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員20人以下 |
| 製造業その他 | 常時使用する従業員20人以下 |
この基準を上回る場合は、補助率1/2以内の区分が適用されます。
基準に近い従業員数の会社は、事前相談の際に自社がどちらの区分にあたるか確認しておくと手続きがスムーズです。
3つの支援枠と補助内容の違い
この補助金には、親族への承継を想定した枠と、第三者承継(M&A)を想定した枠があります。
第三者承継枠はさらに、買い手側・売り手側それぞれの立場で申請できる区分に分かれています。
- 親族承継枠:株価算定に関する専門家費用を補助
- 第三者承継枠(買い手支援A):譲渡側従業員を県内で継続雇用する際の人件費を補助
- 第三者承継枠(買い手支援B):デューデリジェンス費用等、専門家との連携費用を補助
- 第三者承継枠(売り手支援):企業価値算定費用等、専門家との連携費用を補助
補助率はどの枠も共通ですが、上限額は枠ごとに異なります。
親族承継枠は株価算定という単一の取組を対象とするのに対し、第三者承継枠は買い手・売り手それぞれの立場に応じた取組が対象です。
同じ「事業承継」でも、株価算定なのか、雇用継続なのか、目的によって使う枠が変わってくる点に注意してください。
補助率と上限額を比較する
枠ごとの補助率・上限額を表にまとめました。
| 支援枠 | 主な補助対象経費 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 親族承継枠 | 株価算定支援 | 1/2以内(小規模事業者2/3以内) | 20万円 |
| 第三者承継枠・買い手支援A | 従業員継続雇用に係る人件費 | 1/2以内(小規模事業者2/3以内) | 100万円 |
| 第三者承継枠・買い手支援B | デューデリジェンス費用等 | 1/2以内(小規模事業者2/3以内) | 100万円 |
| 第三者承継枠・売り手支援 | 企業価値算定費用等 | 1/2以内(小規模事業者2/3以内) | 100万円 |
親族承継枠は上限が20万円と控えめですが、第三者承継枠は各区分で上限100万円まで補助されます。
自社がどの区分に該当するかによって、想定できる補助額が大きく変わることが分かります。
下限額については、公式情報に明記が見当たりません。
事前に確認しておきたい注意点
制度には、記事作成時点の公式情報で明記されていない事項もあります。
たとえば補助対象経費の下限額や、交付決定前に発注・契約した費用の扱いは、公式ページ上に記載が見当たりません。
こうした細かな点は、事前相談や公募要領で個別に確認しておくと安心です。
申請を検討する場合は、必ず最新の公募要領や募集要項にも目を通しておきましょう。

事前相談の窓口と進め方
交付申請の前には、必ず県への事前相談が求められます。
相談窓口は「かながわ中小企業成長支援ステーション」です。
所在地は横浜市中区日本大通1、神奈川県中小企業支援課内にあります。
電話番号は045-285-0748で、受付時間は平日9時から12時、13時から17時までです。
相談は電話のみで受け付けており、窓口へ直接訪問する形式ではありません。
書類を準備する前に、まず電話で自社の状況を伝えて相談することが最初のステップになります。
自社がどの支援枠に当てはまるか、電話の段階である程度の見通しを聞いておくと、その後の書類準備も進めやすくなります。
申請期間と手続きの流れ
申請期間は令和8年4月1日から令和9年1月29日までです。
ただし予算の上限に達し次第、期間内でも受付を締め切ると案内されています。
早めの準備と申請が望ましいでしょう。
申請の流れはおおむね次の通りです。
- 県への事前相談(電話、必須)
- 交付申請書等の提出
- 審査・交付決定
- 補助事業の実施(交付決定日から令和9年3月15日まで)
- 実績報告書の提出
- その後の年次報告
交付申請前の事前相談は必須とされているため、書類を準備する前にまず相談窓口へ連絡してください。
提出書類を確認する
交付申請時には、以下のような書類の提出が求められます。
- 補助金交付申請書(様式1)
- 役員等氏名一覧表(様式1-2a)
- 支援区分別の補助事業計画書・経費予算書
- 買い手支援Aを申請する場合は補助対象従業員届出書
これらに加えて、小規模事業者と一般の中小企業とで、求められる様式が一部異なる場合があります。
事業終了後の実績報告書は様式16、その後の年次報告書は様式19-2a・19-2bで提出する形です。
自社がどの様式を用意すればよいかも、事前相談の段階で確認しておくと安心です。
なお公募要領は、親族承継枠用と第三者承継枠用とで別々のPDFに分かれて用意されています。
補助事業計画書(様式1-3a〜f)と経費予算書(様式1-4a〜h)も、支援区分ごとに複数パターンが公開されています。
このほか、交付要綱そのものも参考資料として公開されており、より詳しい条件を確認できます。
どのような事業者に向いているか
後継者不在で事業の先行きに悩む経営者や、M&Aによる譲渡・譲受を検討している経営者に向いた制度です。
株価算定やデューデリジェンスは専門性が高く、税理士や中小企業診断士などへの依頼費用がかさみがちです。
その負担を軽くできる点は、事業承継の一歩を踏み出すきっかけになるでしょう。
一方で、審査や予算の制約がある以上、申請すれば必ず補助を受けられるわけではありません。
物価高騰や人手不足といった経営環境の変化を背景に、承継の検討を始めたばかりの事業者にも参考になる内容です。
疑問点があれば、申請書類を作り込む前に、かながわ中小企業成長支援ステーションへ電話で相談してみましょう。
制度の詳細や公募要領、最新の受付状況は、必ず神奈川県事業承継補助金公式ページで確認してください。
申請を検討する際は、事前相談の段階で最新の公募要領も合わせて確認することをおすすめします。


