建設現場で働く人を確保しようとしても、「住む場所や生活環境が整っていない」ことがネックになるケースは少なくありません。
厚生労働省の「人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース〈建設分野〉)」は、中小建設事業主等が作業員の宿舎や訓練施設を整備する際の費用の一部を助成する制度です。
全国のどの都道府県の建設事業主でも申請できます。
建設業ならではの人材確保の課題
建設業は、現場が全国各地に点在する業種です。
地元以外から人を集めようとすると、住まいの確保が大きなハードルになります。
また、若年者や女性が働き続けやすい環境が整っていないことも、人材確保・定着の課題として指摘されてきました。
この助成金は、そうした建設業特有の事情に対応するための制度です。
対象になる事業主
対象になるのは、中小建設事業主や事業主団体、職業訓練法人等です。
建設業の許可を受けて事業を営んでいることや、雇用保険の適用事業主であることなど、基本的な要件を満たす必要があります。
建設分野に特化した助成コースであるため、一般の業種を対象にした助成金とは別枠で用意されています。
対象になる主な施設
このコースが対象にしている施設は、主に次のようなものです。
- 作業員が生活するための宿舎(被災地域での整備を含む)
- 女性が働きやすい環境を整えるための、女性専用の作業員施設
- 技能実習・技能向上のための訓練施設
いずれも、建設現場で働く人材の受け入れ環境や、育成環境を整えるための施設という位置づけです。

元請・下請という構造への配慮
建設業は、元請・下請という重層的な構造で成り立っている業種です。
作業員宿舎や訓練施設の整備は、元請企業が単独で行う場合もあれば、下請企業や協力会社と連携して整備を進める場合もあります。
どの立場の事業主が申請できるのか、複数の事業主が関わる場合の扱いはどうなるのかといった点は、通常の助成金以上に確認しておくべきポイントです。
自社の立場や、現場の関係企業との役割分担を整理したうえで、誰が申請主体になるのかを早めに決めておくことをおすすめします。
助成の区分について
このコースは、対象となる施設の種類によっていくつかの区分に分かれており、区分ごとに助成率や上限額が個別に定められています。
たとえば、被災した地域での宿舎整備、女性専用作業員施設の整備、訓練施設の整備では、それぞれ助成率・上限額の設定が異なります。
最新の助成率・上限額は年度ごとに見直されることがあるため、申請を検討する際は、厚生労働省が公開しているリーフレットや交付要領で必ず確認してください。
申請までの流れ
支給を受けるまでは、おおむね次の流れで進みます。
- 整備したい施設の内容(宿舎・女性専用施設・訓練施設等)を決める
- 計画届を作成し、管轄の労働局へ提出する
- 計画に基づいて施設の設置・整備を実施する
- 支給申請書と費用の内訳書を提出する
- 審査を経て助成金が支給される
申請様式は建設事業主向けに専用のものが用意されており、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
こんな事業者に向いている制度です
このコースは、こうした建設事業主に向いています。
- 遠方からの人材確保のため、宿舎の整備を検討している事業者
- 女性の技能者が働きやすい現場環境をつくりたい事業者
- 技能実習・技能向上のための施設整備を計画している事業者
若年者・女性の入職を後押しする狙い
建設業では、若年者や女性の入職・定着を進めることが、長年の課題として指摘されてきました。
女性専用作業員施設の整備が助成の対象になっているのは、女性が現場で働き続けるための最低限の環境を整えることが、入職を後押しする一歩になるという考え方に基づいています。
更衣室やトイレといった基本的な設備が整っていない現場では、そもそも女性の応募自体が集まりにくいという現実があります。
こうした施設整備は、採用広告を強化する以前に取り組むべき土台づくりともいえます。
訓練施設整備という長期的な投資
作業員宿舎と並んで対象になっているのが、技能実習・技能向上のための訓練施設です。
建設業の技能は、座学だけでなく実際の作業を通じて身につけていく部分が大きく、訓練施設の有無が若手技能者の育成スピードに影響します。
訓練施設の整備は、宿舎整備のように即座に人材確保へつながるものではありませんが、中長期的に自社の技能者を育てていくための投資という位置づけになります。
採用と育成、両方の観点から、自社にとって優先度の高い施設整備がどちらなのかを検討してみるとよいでしょう。
生活環境の整備が定着につながる理由
建設業の人材確保というと、賃金や労働時間の改善に注目が集まりがちです。
ですが、遠方から来た技能者にとっては、日々の生活環境そのものが「この現場で働き続けられるか」を左右する要素になります。
宿舎や施設の整備は、直接的な待遇改善ではないものの、働き続けやすさという点で人材の定着に影響する取り組みです。
自社の採用課題が生活環境に起因していないか、一度整理してみる価値があります。
申請様式が専用に用意されていること
建設分野の助成コースは、一般の業種向けの助成金とは別に、建設事業主向けの専用様式が用意されているのが特徴です。
計画届や支給申請書、費用内訳書といった様式は、建設業の実情に合わせた項目立てになっており、厚生労働省のサイトから建設事業主向けのページを通じてダウンロードできます。
一般的な雇用関係助成金の様式と混同しないよう、必ず「建設事業主等に対する助成金」の専用ページから最新の様式を入手するようにしましょう。
様式が変更されることもあるため、古い様式のまま申請してしまわないよう、申請の都度、最新版を確認することをおすすめします。
事業主団体・職業訓練法人としての活用
このコースは、個々の建設事業主だけでなく、事業主団体や職業訓練法人が申請主体になれる点も見逃せません。
複数の中小建設事業主が加盟する団体が、共同で訓練施設を整備するようなケースでは、個社で対応するより効率的に環境整備を進められる可能性があります。
自社単独での整備が難しい場合は、加盟している事業主団体に、共同での活用を相談してみるのも一つの方法です。
労働局への早めの相談がカギになる
建設分野の助成コースは、区分が細かく分かれているぶん、自社の計画がどの区分に当てはまるのか判断に迷うことも少なくありません。
計画届を提出する前の段階で、管轄の労働局やハローワークの窓口に相談しておくことで、区分の選び方や必要書類について具体的なアドバイスを得られることがあります。
書類を作り込んでから「区分が違っていた」と気づくと手戻りが大きくなるため、早い段階での相談を心がけましょう。
制度の詳細・最新の申請要件は、必ず公式情報でご確認ください。
出典:建設事業主等に対する助成金|厚生労働省



