社員に研修を受けさせたいけれど、研修費用と、研修中の人件費の両方がかかることを考えると、二の足を踏んでしまう。
そんな悩みを抱える事業者は少なくありません。
厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、従業員向けの職業訓練にかかる費用や、訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
全国どこの事業者でも申請できます。
どんな制度なのか
人材開発支援助成金は、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練(OJT・Off-JT)を計画に沿って実施した事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
複数のコースが用意されており、目的に応じて使い分けられるようになっています。
主なコースの例
代表的なコースには、次のようなものがあります。
- 人材育成支援コース:職務に関連する知識・技能を習得させる訓練を支援
- 事業展開等リスキリング支援コース:新たな事業展開等に対応するための訓練を支援
- 人への投資促進コース:高度デジタル人材の育成やeラーニングなどを支援
- 教育訓練休暇等付与コース:有給の教育訓練休暇制度の導入・運用を支援
2026年度からは、45歳以上の従業員を対象とした「中高年齢者実習型訓練」も新たに対象に加わりました。
助成される内容
助成の対象になるのは、次のような費用です。
| 助成の種類 | 内容 |
|---|---|
| 経費助成 | 訓練にかかった経費の一部(中小企業は最大75%程度) |
| 賃金助成 | 訓練期間中に支払った賃金の一部 |
助成率や助成額は、選択するコースや訓練の内容によって異なります。
自社が計画している研修がどのコースに当てはまるかを、公式サイトで確認する必要があります。

いつでも申請を検討できる制度
人材開発支援助成金は、特定の期間だけ募集される制度ではなく、通年で申請を受け付けています。
「職業訓練実施計画届」を作成し、労働局へ提出したうえで訓練を実施する流れです。
年度のどのタイミングからでも計画を立てられるため、研修の実施時期に合わせて準備を進められます。
申請までの流れ
申請は、おおむね次の流れで進みます。
- 実施したい訓練の内容とコースを検討する
- 職業訓練実施計画届を作成し、労働局へ提出する
- 計画に沿って訓練を実施する
- 訓練終了後、支給申請書類を提出する
- 審査を経て助成金が支給される
計画届の提出は、訓練を開始する前に行う必要があります。
順番を誤ると対象外になる可能性があるため、注意が必要です。
申請前に確認しておきたいこと
申請を検討する際は、次の点を整理しておきましょう。
- 実施したい研修の内容と、対象にしたいコース
- 訓練を受けさせたい従業員の範囲
- 計画届の提出スケジュール
- 訓練期間中の賃金支払いの体制
コース選びで迷ったときの考え方
複数のコースが用意されているため、どれを使えばよいか迷う事業者も少なくありません。
選ぶときの目安として、次のような考え方があります。
- 現在の業務に必要な知識・技能を身につけさせたい → 人材育成支援コース
- 新規事業や事業転換に向けた準備をさせたい → 事業展開等リスキリング支援コース
- デジタル人材の育成やeラーニングを活用したい → 人への投資促進コース
- 教育訓練休暇の制度そのものを整備したい → 教育訓練休暇等付与コース
自社が今後どのような人材を育てたいのかを整理してから、コースを選ぶとミスマッチを防ぎやすくなります。
中高年齢者実習型訓練という新しい選択肢
2026年度から対象に加わった「中高年齢者実習型訓練」は、45歳以上の従業員を対象にした実習型の訓練です。
若手だけでなく、経験豊富な中高年齢層の従業員にも学び直しの機会を提供したいと考える事業者にとって、新たな選択肢になります。
こんな事業者に向いている制度です
人材開発支援助成金は、こうした事業者に向いています。
- 社員のスキルアップのため、外部研修を実施したい事業者
- DXやリスキリングに向けた社員教育を計画している事業者
- 中高年齢層の従業員に実習型の訓練を行いたい事業者
訓練後の効果測定も意識しておく
訓練を実施したあとは、支給申請のために訓練の実施状況を記録し、受講者の出席記録や訓練内容を証明する書類をそろえる必要があります。
単に助成金を受け取ることを目的にするのではなく、訓練によって従業員のどんな力が伸びたのかを社内で振り返る機会にもなります。
訓練計画を立てる段階で、どのような効果を期待するかを整理しておくと、実施後の評価もしやすくなります。
よくある疑問
Q. どんな研修でも対象になりますか?
職務に関連した知識・技能を習得させる訓練であることが前提です。
コースごとに細かい要件があるため、公式情報で確認してください。
Q. オンライン研修(eラーニング)でも対象になりますか?
コースによってはeラーニングを含む訓練が対象になります。
詳細は各コースの案内で確認してください。
Q. 訓練が終わってからでも申請できますか?
訓練を始める前に「職業訓練実施計画届」を提出する必要があります。
訓練後の事後申請はできません。
Q. 外部の研修機関に委託する訓練でも対象になりますか?
外部の教育訓練機関に委託する形式の訓練も、要件を満たせば対象になります。
自社内で行うOJTとは異なる要件が定められている場合があるため、事前に確認してください。
Q. パート・アルバイトも訓練の対象にできますか?
雇用形態によって対象範囲や助成内容が異なる場合があります。
詳しいコースごとの対象労働者の範囲は、公式情報で確認してください。
Q. 訓練費用の一部を従業員に負担させても対象になりますか?
訓練経費の負担のあり方によって、対象になるかどうかが変わる場合があります。
訓練の費用負担は、あらかじめ事業主側で整理しておくとよいでしょう。
Q. 複数のコースを組み合わせて使えますか?
コースごとに要件が異なりますが、目的に応じて複数のコースを段階的に活用するケースもあります。
詳細は公式情報や労働局の窓口で確認してください。
制度の詳細・最新の申請要件は、必ず公式情報でご確認ください。
出典:人材開発支援助成金|厚生労働省

人材育成は、一度の研修で終わるものではなく、継続的な取り組みが成果につながりやすい分野です。
助成金を単発で使い切るのではなく、年間の育成計画の中に組み込んで活用することも検討してみてください。
制度の詳しい手続きに不安がある場合は、労働局や社会保険労務士に相談する方法もあります。
計画的に活用することで、社員育成と経費負担の両立がしやすくなります。
訓練の効果を振り返りながら、次年度以降の計画にもつなげていきましょう。
制度の内容は年度ごとに見直されることがあるため、最新の案内を確認する習慣も大切です。
無理のない範囲で、少しずつ社員教育の仕組みを社内に整えていきましょう。
制度を上手に活用しながら、長く働ける職場づくりにもつなげていきたいところです。


