平塚市に事業所を持つ中小事業者が、従業員の基本給を引き上げたときに申請できる奨励金があります。
「平塚市中小企業等賃上げ応援奨励金」です。
経費の一部を補うものではなく、賃上げという実績そのものに対して市が奨励金を支給する仕組みです。
対象は常時雇用する従業員が5人以上いる市内の中小事業者で、支給額は従業員数と賃上げ率に応じて10万円から30万円まで4段階に分かれます。
ここでは制度の中身を、申請を検討する事業者向けに整理します。
経費補助ではなく賃上げ実績への奨励金
この制度は、設備投資や広告費など特定の経費を補助するタイプの補助金とは性格が異なります。
対象になるのは、実際に基本給を引き上げたという「結果」です。
補助対象経費の領収書を集めて精算する、といった手続きは基本的に発生しません。
その代わり、賃金台帳など賃上げの事実を示す書類の提出が求められます。
定期昇給や各種手当、割増賃金、賞与、退職金は対象に含まれません。
あくまで基本給そのものの改定が条件です。
地域別最低賃金の引き上げに伴う増額改定も、この奨励金の対象からは除かれます。
会社の判断による基本給の改定であることが前提です。
対象となる事業者の条件
奨励金を受け取るには、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。
主な条件は次のとおりです。
- 平塚市内に事業所があること
- 市内事業所で常時雇用する従業員が5人以上いること
- 雇用保険の適用事業所であること
- 労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業所であること
- 大企業やみなし大企業に該当しないこと
株式会社や個人事業主に限らず、医療法人や学校法人、社会福祉法人なども対象に含まれる点は特徴的です。
業種を問わず幅広い事業者が申請の対象になり得ます。
一方で、常時雇用従業員が5人未満の小規模な事業所は対象外になるため、まず自社の雇用人数を確認しておく必要があります。

賃上げの条件と対象期間
奨励金の対象になる賃上げには、期間と上昇率の条件があります。
対象期間は令和8年(2026年)1月1日から12月31日までです。
この1年間のうちに実施した基本給の改定が対象になります。
上昇率の条件は「一度の改定で、従業員1人当たり平均1.5%以上」の引き上げです。
複数回に分けた小刻みな改定を積み上げて条件を満たす、という扱いではありません。
一度の改定でどれだけの上昇率になるかを、事前に社内で試算しておくとよいでしょう。
なお、ここでいう基本給は、定期昇給分や各種手当、割増賃金、賞与、退職金を除いた金額です。
給与明細の額面全体ではなく、基本給の項目そのものを基準に計算する必要があります。
従業員数と増加率で決まる4段階の支給額
支給額は、常時雇用従業員の人数と、基本給の増加率という2つの軸で4段階に分かれています。
自社がどの区分に当てはまるかは、下の表で確認できます。
| 常時雇用従業員数 | 基本給の増加率 | 支給額 |
|---|---|---|
| 5人以上10人未満 | 1.5%以上2.5%未満 | 10万円 |
| 5人以上10人未満 | 2.5%以上 | 15万円 |
| 10人以上 | 1.5%以上2.5%未満 | 20万円 |
| 10人以上 | 2.5%以上 | 30万円 |
最も支給額が高いのは、従業員10人以上の事業者が基本給を2.5%以上引き上げた場合の30万円です。
従業員数が多く、かつ引き上げ幅が大きいほど、支給額も段階的に上がる設計になっています。
自社の規模と検討している賃上げ幅を照らし合わせて、どの区分を狙うか計画を立てておくと申請時の準備がしやすくなります。
申請期間と受付の注意点
申請期間は令和8年4月1日から令和9年1月31日までです。
対象期間である2026年の賃上げを実施したうえで、翌年1月末までに申請する流れになります。
注意したいのは、予算に上限がある点です。
平塚市の案内では、予算に達した場合は申請期間内であっても受け付けを終了することがあるとされています。
申請を予定している事業者は、早めに準備を進め、期間の後半まで待たずに手続きすることをおすすめします。
申請にあたっては、賃金台帳や雇用保険・労災保険の適用を示す書類など、複数の証拠書類が必要になると見込まれます。
具体的な必要書類や様式は、申請時点の最新の案内で必ず確認してください。
申請の手続きと必要になりそうな書類
奨励金は、賃上げを実施した後に申請する仕組みです。
基本給の改定を行い、対象期間(令和8年1月1日~12月31日)の実績が確定してから、申請期間中に市へ書類を提出する流れになります。
申請時には、基本給を1人平均1.5%以上引き上げたことを裏付ける資料が必要になります。
具体的には、改定前後の基本給がわかる賃金台帳や給与規程の写しなどが想定されます。
あわせて、雇用保険・労災保険の適用事業所であることを示す書類、常時雇用する従業員数を確認できる資料の提出も求められる可能性があります。
必要書類の正式な一覧や様式は、市が公開する募集要領・申請様式に記載されます。
申請前に必ず最新の様式を確認し、記入漏れや添付漏れがないよう準備することが大切です。
書類に不備があると審査に時間がかかったり、予算到達による早期終了と重なって受け付けられなくなったりする可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールで動くことをおすすめします。
賃上げを検討する際に押さえたいポイント
奨励金の活用を検討する場合、単に「基本給を上げれば受け取れる」と単純に考えるのではなく、いくつかの視点を持っておくと計画が立てやすくなります。
- 現在の従業員数が5人以上10人未満か、10人以上かで、支給額の上限区分が変わる
- 増加率を1.5%台にとどめるか、2.5%以上を目指すかで支給額が変わる
- 定期昇給や賞与の増額だけでは条件を満たさないため、基本給そのものの改定として整理する必要がある
- 予算に上限があるため、対象期間内の早い時期に賃上げを実施し、申請も早めに行う方が安心
例えば、従業員10人の事業者が基本給を2.5%以上引き上げれば30万円の対象になりますが、1.5%台にとどまると20万円の区分になります。
逆に従業員が5人程度の事業者であれば、同じ2.5%以上の引き上げでも支給額は15万円です。
自社の従業員数と、無理なく実施できる引き上げ幅のバランスを見ながら、どの区分を目指すかを人事担当者や経営者で話し合っておくとよいでしょう。
どのような事業者に向いているか
この奨励金は、次のような平塚市内の中小事業者に検討の余地があります。
- 従業員の待遇改善として基本給の引き上げを予定している
- 常時雇用従業員が5人以上おり、雇用保険・労災保険の適用事業所である
- 人材確保や定着のために賃上げを進めたいが、原資の一部を後押ししてほしい
一方で、常時雇用従業員が5人未満の事業所や、最低賃金の引き上げに伴う改定のみを予定している場合は対象外になるため注意が必要です。
基本給以外の手当や賞与の増額だけでは条件を満たさない点も、あらかじめ押さえておきたいポイントです。
申請前に公式情報を確認する
制度の詳細や必要書類、最新の受け付け状況は、平塚市産業振興部産業振興課が公開している公式情報で確認できます。
予算状況によって受け付けが早期に終了する可能性もあるため、申請を検討する場合は早い段階で公式ページを確認し、公募要領など最新の案内に目を通すようにしてください。


