荷主と運送事業者が連携して申請する制度
トラックドライバーの荷待ち時間や、長時間労働の背景には、荷主・倉庫事業者・運送事業者の間の取引慣行が関わっていることが少なくありません。
厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース)」は、こうした物流の取引環境そのものを見直す取り組みを支援する制度です。
この助成金の大きな特徴は、1社だけでは申請できないという点です。
荷主・倉庫事業者・運送事業者など、立場の異なる3者以上が集団を組んで、共同で申請する仕組みになっています。
自社単独で使える設備投資の助成金とは性質が異なるため、まずこの前提を押さえておく必要があります。
対象になる集団の要件
対象になるのは、個々の事業者ではなく、複数の事業主で構成される「集団」です。
主な要件は次のとおりです。
- 代表事業主を含め、3以上の事業主で構成されていること
- 構成員に荷主または倉庫事業者を1者以上、運送事業者を1者以上含むこと
- 構成員は、それぞれ異なる企業グループに属していること
- 代表事業主は法人格を持ち、労災保険の適用事業主であること
- 構成員のうち中小企業事業主の割合が、運送事業者の2分の1を超えていること
つまり、荷主企業だけ、あるいは運送会社だけで申請することはできません。
取引関係にある複数の事業者が、あらかじめ話し合って集団を形成したうえで、代表事業主が申請窓口になる流れです。
対象地域は全国で、都道府県労働局を通じて申請します。
特定の都道府県に限定された制度ではありません。
どのような取り組みが対象か
対象になるのは、荷主・運送事業者などが連携して行う、労働環境改善に向けた取り組みです。
公式情報で明記されている範囲では、次のような内容が想定されています。
- 荷待ち時間の削減につながる取引慣行の見直し
- 検品や荷役作業の効率化に向けた仕組みづくり
- 運送業務にかかわる情報共有・連絡体制の改善
具体的にどの経費が対象になるかは、交付要綱や様式で細かく定められています。
申請を検討する段階で、必ず公式の交付要綱を確認してください。

取り組み内容の具体例
取引環境改善コースで実施する取り組みは、集団ごとに具体的な内容が異なります。
公式情報で示されている取り組みの方向性を踏まえると、一般的には次のような例が考えられます。
- 荷待ち時間を減らすための予約受付・入退場管理の仕組みづくり
- 伝票や検品にかかる作業手順の統一による荷役の効率化
- 荷主と運送事業者の間での定期的な情報共有の場の設置
これらはあくまで想定される取り組みの方向性であり、どの内容が対象経費として認められるかは交付要綱や様式に基づいて判断されます。
集団内で改善計画を作る段階から、要綱の記載を確認しながら進めることが欠かせません。
助成額の目安
助成額は、対象経費と上限額のいずれか低い方が支給される仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成上限額 | 100万円(定額) |
| 支給額の考え方 | 対象経費の合計額と、助成上限額100万円のいずれか低い額 |
助成率という形ではなく、実際にかかった対象経費と上限100万円を比べて、低い方の金額が支給される点に注意してください。
対象経費の内訳や算定方法は、公式の交付要綱・様式で確認する必要があります。
申請期間と募集状況
2026年度は、令和8年4月13日から申請受付が始まっています。
交付申請の期限は、令和8年11月30日午後5時までです。
ただし、国の働き方改革推進支援助成金は例年、予算の上限に達し次第、期間の途中でも受付が終了する可能性があります。
取り組みを検討している集団は、期限間際ではなく、早めに準備を進めることが望ましいといえます。
他コースとの違い
働き方改革推進支援助成金には複数のコースがあり、混同しやすいため整理しておきます。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース:中小企業事業主が単独で、残業削減や年休取得促進のために申請するコース
- 団体推進コース:事業主団体等が、傘下の会員企業向けに労働時間改善の取り組みを進めるコース
- 業種別課題対応コース:建設業・運送業・医療業など、業種特有の労働時間課題に対応する単独企業向けコース
- 取引環境改善コース(本記事):荷主・倉庫事業者・運送事業者など3者以上の集団が、取引環境そのものを見直すコース
取引環境改善コースは、申請主体が「集団」である点、そして荷主側と運送側の双方を巻き込む点で、他のコースとは仕組みが大きく異なります。
運送事業者だけで検討している場合は、業種別課題対応コースなど、単独企業向けの制度もあわせて確認するとよいでしょう。
よくある質問
申請を検討する事業者から寄せられやすい疑問を整理します。
Q. 運送事業者1社だけでも申請できますか。
できません。
荷主または倉庫事業者を含む3以上の事業主で集団を組む必要があります。
Q. 集団の構成員は、同じ企業グループの会社同士でもよいですか。
対象になりません。
構成員は、それぞれ異なる企業グループに属している必要があります。
Q. 対象地域は特定の都道府県に限られますか。
限られません。
全国の事業者が、都道府県労働局を通じて申請できる制度です。
Q. 申請期限まで余裕があれば、急いで準備しなくてよいですか。
予算の上限に達し次第、期間の途中でも受付が終了する可能性があります。
早めの準備が望ましいといえます。
申請までの流れ
申請は、おおむね次のような流れで進みます。
- 荷主・倉庫事業者・運送事業者など、取引関係にある事業者同士で集団の形成を話し合う
- 代表事業主を決め、構成員の要件(企業グループの違い、中小企業比率など)を確認する
- 取引慣行の見直しなど、具体的な改善計画を作成する
- 都道府県労働局に交付申請を行い、交付決定を受ける
- 改善の取り組みを実施し、実績報告を行う
集団の形成には一定の調整期間がかかることが想定されるため、申請期限の直前に動き始めるのではなく、早い段階から関係事業者との調整を進めておくことが重要です。
どのような集団に向いているか
この制度は、こうした立場の事業者に向いています。
- 荷待ち時間の長さが課題になっている運送事業者
- 発注先の運送事業者との取引慣行を見直したい荷主企業
- 倉庫での荷役作業の効率化を検討している倉庫事業者
- すでに取引関係にあり、共同で労働環境改善に取り組める複数の事業者
一方で、単独企業として自社内の残業削減や有給取得促進に取り組みたい場合は、労働時間短縮・年休促進支援コースなど、他のコースの方が適していることがあります。
自社の状況に合わせて、どのコースが対象になるかを確認してください。
申請を検討する際の注意点
取引環境改善コースを検討する際は、次の点に留意しておくとよいでしょう。
- 集団の形成には、荷主・倉庫事業者・運送事業者それぞれの合意と調整が必要になります。話し合いには一定の時間がかかることを見込んでおきましょう。
- 中小企業事業主の割合など、構成員の要件を満たしているかは、集団を組む段階で必ず確認してください。
- 対象経費や算定方法は、交付要綱・様式に細かく定められています。思い込みで進めず、必ず一次情報を確認してください。
- 予算の上限に達すると、期限前でも受付が終了する可能性があります。準備が整い次第、早めに申請することが望ましいといえます。
こうした点を事前に押さえておくことで、集団形成から申請までをスムーズに進めやすくなります。
申請にあたっては、必ず働き方改革推進支援助成金公式ページで最新の交付要綱・様式・募集状況を確認してください。
制度の詳細は変更されることがあるため、申請前の最終確認を欠かさないようにしましょう。


